The story of "LIFE"

第 10 章「無量義(むりょうぎ)」
第 05 節「獅子王の会座(えざ)」

第 31 話
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旧メビカ船団の海兵たちは、上陸して王国兵と市街戦になっていた。
頭領ヌダオン=レウォと部下たちは皆、馬を操る。

しかし港には戦闘員だけでなく、水夫たちや、そこで暮らす人々もいるのだ。
大砲を撃ち込まれて、埠頭や軍事施設を中心に壊滅状態となったミナリィ港から、取るものも取り敢(あ)えず逃げ惑う人々がいた。

「王国の民よ!
ロマアヤ艦隊、及びLIFE騎士団は、あなたたちに危害を加えない!
戦闘に巻き込まれぬよう、家族でまとまって退避していてほしい!」

そう言われても俄(にわ)かには信じられない。
王国兵を家族に持つ者も多かった。

北を指してメレナティレまで逃げられると厄介だ。
到底歩いて行ける距離ではなく、この戦役で住民から犠牲を出すわけにはいかない。

砲撃が終わり、錨(いかり)が下ろされる。
レスタルダが旧ウズダク海軍を率いて上陸し始めた。

ヌダオンは部下を遣わしてレスタルダに意向を伝えた。

それは、王国兵との戦闘を旧海軍に託し、自分たちは逃げ散った住民の保護に動きたいということだった。

すぐに返答があって、ヌダオンは部下たちを集め、言った。

「人が歩ける道に分かれて、住民を連れ戻すんだ。
森に隠れている者もいるかもしれぬ。
声を上げてこちらの意思を伝えるのだ。」

西に封印の塚と、多少の集落がある。
北方はディスマを抱える深い森であり、10時間以上も歩き続けなければ人に出会えないだろう。
東方はLIFE騎士団と王国兵が睨み合っていて、戦場になることは間違いない。

「非戦闘員を見たら声をかけ、馬から降りて、武器を捨てて近付くようにしろ。」

住民の保護をヌダオンに託した旧海軍のレスタルダは、自ら先頭に立って北東へ進撃した。
最後方にハムヒルドの車が続く。

北側の森に潜んで襲撃してくる王国兵が後を絶たなかった。
とはいえ、海賊の末裔である海の民は、陸の上での戦闘など造作ないことだ。

やがてLIFE騎士団の先鋒であるウタックやハッボスの部隊にぶつかると、両者は初対面ながら手を取り、時には抱擁して喜び合うのだった。

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