第 10 章「無量義(むりょうぎ)」
第 05 節「獅子王の会座(えざ)」
ミナリィに近い森の中で爆音が起こったことから、付近で待機していたレンガーの部隊とヌザルムの部隊が動き始めた。
「機兵が出たら任せろ。
敵兵を倒していってくれ。」
「よしっ。」
馬車が止まっているのをずっと見張っていた王国兵たちが攻撃を仕掛けた。
道の右から左から躍りかかってくるのは敵の騎士たちだ。
レンガーは王国騎士時代、決して強い方ではなかった。
今手合わせしている相手を見れば皆エリートばかりで、一年前なら剣を取り落として敗れただろう。
その彼がLIFE戦術を身につけてから、一体どう変わったというのか。
かつては相手の目を恐れ、剣の動きを恐れ、力の差を恐れていた。
しかしLIFE戦術は、相手の生命と自身の生命の打ち合いであることを体で学んできた。
害意を持った目。
見下すような目。
驕り高ぶった目。
それがどうしたというのだ。
何の役に立つというのだ。
今ではちっとも恐ろしくない。
レンガーは怒りを覚えた。
相手が力に頼る者ならば、歴然と力の差を思い知らせてやらねばなるまい。
スヰフォスが彼と部隊のために選んでくれた盾は、騎士の剣では破れない。
盾を壊すための武器ならば話は別だが、剣は斬撃を主とするものであり、強度の高いものを打つようにはできていないのだ。
武器の特質について、スヰフォスはよく隊長たちに話して聞かせてくれたものである。
彼は自分の戦法にも、剣にも盾にも自信を持っていた。
握りしめた武具に信頼があった。
だから恐れなく突っ込むことができた。
王国騎士の流儀の中に、強さを追求する目的ではなく、上下関係を維持する目的で取り入れられたものが多く混在する。
レンガーはすでにその外側へ飛び出している。
彼がなぜ王国騎士団の中で力を発揮できなかったかといえば、それは伸びることを制限された状態で訓練されていたからだ。
つまり、上の人間が、下の人間の台頭を許さない目的で、押さえつけていたのだ。
剣撃が盾に当たった。
敵はこんなに強打するつもりはなかっただろう。
そこはレンガー自ら、当てに行った。
跳ね返した。
レンガーの剣先が光る。
ファラと同じ、刃のない剣。
敵の兜が突かれて吹っ飛んだ。
その顔に見覚えがあった。
昔、わざと剣を折られたことがある。
たとえどんなに憎くても、無防備になった頭部を狙うことはLIFE戦術に反する。
両手持ちに構えた剣で、左の肩から右の脇へ、渾身の襷(たすき)斬りが炸裂した。