第 10 章「無量義(むりょうぎ)」
第 05 節「獅子王の会座(えざ)」
「ヴェサさん、後方へ。」
老婆はそう言われても聞かない。
二人の手を振り払って敵の前に立った。
「どけっ、腰抜けどもめ!!」
そう怒鳴りつけ司令官の頭を杖で打った。
「このババア・・・!!」
剣閃が走る。
バミーナが飛び出したが間に合わなかった。
ヴェサのロニネが現れて、ジェネラルの剣が弾き飛ばされた。
彼女はその隙を逃さない。
“LIFE”の魔法陣を込めた杖の一突きで、ジェネラルは大声を上げて倒れ、のた打ち回った。
「次は誰だい!!」
逃げ出す者がいた。
「ぼやぼやするんじゃない、早く追うんだ!!」
ナーズンが駆け出す。
向かってくるのを見て更に逃げる者がいた。
ナーズンは森へ逃走する敵兵の足元目掛け、爆裂弾を撃ち込んでいく。
「うわあああっ・・・。」
転倒した者にはショックガンが見舞われた。
2人、3人、・・・10人ほどが捕まった。
ヴェサの前に立ち塞がったバミーナは勇敢な兵士だ。
逃げずに戦意を示した4人ほどを相手に、長い棍棒を操って槍術を振るう。
あるいは打たれ、あるいは突かれ、ひっくり返され、武器を奪われた。
ヴェサは戦場に立っても物怖じしない。
自ら敵に近付いて行って威圧した。
「おっと、挟まれたようだ。
しばらくもつかい?」
「はい。
北東へ?」
「あたしが森から来る奴らを引き受けよう。
あんたは港から来る方をたのむよ。」
ヌダオン=レウォの艦隊が上陸したらしい。
ミナリィ港の敵軍は潰走状態になっていた。
その逃げ腰をバミーナが討つ。
ヴェサは微動だにせず、森の奥から現れる機械兵団を睨みつけていた。
ナーズンが戻って来て最初に見たものは、堅固な装甲を持った大型の機械兵が、ヴェサの光魔法に射抜かれて爆発する光景だった。