The story of "LIFE"

第 10 章「無量義(むりょうぎ)」
第 05 節「獅子王の会座(えざ)」

第 26 話
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ミナリィ港を望む海上で、ザンダは総攻撃の指示を下した。

「いよいよ王国を攻める時だ。
まずミナリィを落として占領する!
犠牲者を出すな。
“LIFE”の魔法陣を忘れないでくれ。」

彼は最初、シェブロンを乗せてロマアヤへ帰ろうと考えた。
守るべき師を敵の本拠地へ連れて行くことに意味はあるのか。

そのことをシェブロンに伝えると、師は若い弟子を鼓舞するように言った。

「青年時代、“LIFE”の理想を掲げ、数十年に亘って戦いを進めてきた。
その勝敗を決する大切な時に、敵を前にして保身を考えることなどできない。
私はリザブーグ王国時代の囚人だ。
だが、流刑地を脱出して異国へ逃亡するような、こそこそした真似はしない。
正しい人間を追放したということを彼らが認め、悔い改めるまで断固戦う。
王国なき今、私は正邪を決する法廷へ殴り込みをかけるつもりできみの力を借りているんだよ。」

少年は脱帽した。
どんなに激しい戦闘になろうとも、師を守り、包囲を破り、師が生命を賭して戦ったリザブーグの地へ戻っていただこうと心に決めた。

別働隊となる、メレナティレ救出には、騎士ルビレム配下のベリオングが名乗り出てくれた。
永くロマアヤを守り続けた戦士ポートル、兵士ダッツも共に赴く。

ザンダは彼らに念を押した。

「悪魔たちが北に向かっている。
無理をせず、できるだけ戦闘を回避してくれ。」

ベリオングは勇猛な戦士である。
そして先代ゼオヌール公への忠誠は、嫡子ザンダに対しても変わることがない。

「はい。
上陸には装甲車を使います。
現地のトーハさんと連携して事にあたります。」
「頼んだよ。
技師仲間がいるはずだ。
住民の安全を最優先にしてほしい。
陸路からも味方が来るだろう。」

少年は真剣な顔だったが、言い終わると無邪気に笑って拳の親指を見せた。

ロマアヤ艦隊は右翼に旧メビカ艦隊、左翼に旧ウズダク艦隊に守られながら進む。

出撃の命令を受けて、ザンダの主艦に集まっていた各隊の首脳が持ち場に着く。

セトのテンギ戦で右腕を失ったハムヒルドはキャプテンではなくアドミラルの地位に就いていた。
後任のキャプテンはレスタルダである。

「主艦が打ち上げ花火で敵に宣戦布告したら、容赦なく撃ち込むからな。」

ザンダは頷いた。

「提督、建物と機械兵を中心に頼むぜ。
人や、人が乗った兵器を撃たないでくれ。」
「わかっているさ。」

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