第 10 章「無量義(むりょうぎ)」
第 05 節「獅子王の会座(えざ)」
フィヲは白から桃色までの数色を選び、糸は深い赤と深い緑でまとめた。
外は敵に包囲され、戦うことが回避できない状態になっていた。
ファラは1分後には飛び出すことを覚悟しつつ、フィヲの方へ寄り、彼女が選んだ生地を見た。
「“LIFE”を色で表すと、こんな色調になりそうだね。」
「帰ったら、ファラくんも一緒に魔法を込めるのよ。」
「うん、分かってる・・・。
フィヲ、ここを守っててくれるかい?」
「一人で大丈夫なの!?」
「なんともないさ。
ずいぶん集まってきたものだ。」
一つの窓から数十人の術士が見えた。
四方を囲まれているとしたら、百を越す人数かもしれない。
「ロワムちゃん、おねえちゃんと待っててね。
もしもあいつらがおうちを壊すようなことをしたら、ぼくが全員のサイフを取り上げて、おうちを直してあげる。」
少女がこらえきれず大きな声を出しそうになったので、フィヲが口を押さえた。
もうファラは振り返らない。
正面の玄関を開けると、それを普通に閉めた。
目の前まで敵が押し寄せていた。
抜刀し、3人まとめて倒した。
様々な属性の魔法が飛んできたが、全てを吸収した。
彼には現象を司る魔法が全て失われている。
剣を一振り、二振り、当たったものは爆発して弾け飛んだ。
「さあどうした!
総力で来い!!」
追いまくって一人を叩きのめす。
横から攻めてきた一団を薙ぎ払う。
突如、狼のヴィスクと狐のラナシーヴが現れて、逃げ散る敵を根こそぎ地面にひっくり返した。
ラナシーヴは「ゾー(重力)」を使う。
倒れた者は自力で立ち上がることができない。
「どこだ、ボルフマン・・・!!
卑怯者め!!」
建物の陰に潜んでいたボルフマンは、憎悪剥(む)き出しで猛(たけ)り狂った。
ファラの背後に現れると、鋭利な刃をいくつも持った魔剣を差し向けてくる。
だが大型のカイトシールドが見事に敵の剣先をつかまえた。
ファラは相手の勢いを左へ逸(そ)らすと、強烈な膝蹴りでボルフマンの腹部をとらえる。
更に向き直り振り下ろした大剣は、刃が返されていた。
ズドンと響くような音がして、ボルフマンは背を強打されると、地面に弾んだ。
ファラは力ずくで忌々しい魔剣を取り上げ、「インツァラ(爆発)」で重心から破裂させてしまった。
バラバラと破片がボルフマンの上へ落ちる。