The story of "LIFE"

第 10 章「無量義(むりょうぎ)」
第 05 節「獅子王の会座(えざ)」

第 17 話
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魔族の一群は北の大陸オルブームの中心地ヤコハ=ディ=サホや、「長老の木」を求めて集結しているのではないかという話があった。
悪魔ニサーヤとの戦いで負傷したヱイユが急速に回復したのは長老の木の力だ。

今、リザブーグの上空を見上げるファラも、不気味な沈黙を感じていた。

メレナティレの空を覆っていた魔獣たちがここには来ていないのだ。

『態勢を立て直して総攻撃してくるんじゃないか・・・。』

フィヲは相変わらずにこにこしている。
ファラが先に行きそうになると、足を速めて横を歩こうとする。

「ねえ、ファラくん・・・。」

こう言って彼の手を取った。

「フィヲ、この手は離さないよ。
どんな戦いになってもそばにいてね。」

さすがにフィヲも赤面した。
強く握りながら、ファラはフィヲの顔を引き寄せ、声をひそめて言った。

「外にいる時は気を抜いちゃだめだ。
・・・ほら、後ろに足音が聞こえるだろう?」

振り向いてもフィヲには分からない。

「確かに誰か来ている・・・!!」

ファラはフィヲの手を取って、ふいに街路の脇道へそれた。

そこに隠れて、後ろの足音が立ち止まるか、通り過ぎるのか、引き返すのか、じっと待った。

フィヲはまだ気分が高ぶっているようで、ファラとこうして狭いところで息をこらしているのに耐えられない。

ファラは、彼女と距離を取って戦闘に突入するのがいいかと迷った。
ふいを突けばフィヲを遅れさせられるだろう。

だが、未知の敵と戦う危険に彼女を巻き込んでしまう恐れがあった。
彼はフィヲの目を見て、街路の反対側へ出ようと指差した。

フィヲはうなづいて、彼の手をひっぱりながら歩いていく。

ファラはふと、足音の方へ目をやった。

一瞬、相手の視線とぶつかった。

それは魔剣士ボルフマンだった。

『あいつめ、まだ根に持っているのか・・・!!』

ファラは忌々しい気持ちになったが、足を止めることなく通り過ぎたボルフマンの後ろに、まだ数人ついていくのが見えた。
黒いローブを着た術士が5人か、6人・・・。

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