The story of "LIFE"

第 10 章「無量義(むりょうぎ)」
第 05 節「獅子王の会座(えざ)」

第 14 話
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店に入ると、武器屋の主人はファラを覚えていた。
しばらく鍛錬中の金物にかかりきりだったが、やがてマスクを外して応対してくれた。

「腕を上げたな。
正直、刃のない剣でどこまで勝ち抜けるか、心配していたんだ。
それが、聞いたところ負けなしというじゃないか。」
「以前、割り引いて譲っていただいた剣、素晴らしい性能でした。
機械兵のランチャー砲に突っ込んで止めたこともありましたし、どんな名刀が相手でも粉砕してしまったんですよ。」
「それはお前さんの力量ってものだ。
相手の剣の弱点まで見破れなければ、金属の剣が砕けたりはしない。
・・・で、最後は誰に?」

鍛冶屋は我が子の最期を知りたがる父親のように、無刃刀コランダムを破壊した相手を聞いてきた。

「ご主人は17年前、リザブーグにいらっしゃいましたか?」
「いや、当時はここを離れて、ミルゼオで商人の真似事をして暮らしていたんだ。
国全体がおかしくなっちまっていたからな。」
「ぼくはその頃の生まれなのですが、父と母がリザブーグで戦っていたんです。
シェブロン先生をご存知ないですか?」
「お名前だけは伺っている。
学師様も甚(いた)く尊敬されているとか。」
「最初バトルメイスを求めて、無刃刀を手にしたのも、不殺生を信条とするからなんです。
剣士における不殺生を、魔法では“LIFE”と呼んでいます。」
「うむ、詳しくは分からないが、おれの理想もそこにあったんだ。
・・・だが、売れるのは人殺しの道具ばかりさ。」
「スヰフォス先生が戻られていますので、また“LIFE”のお話でもしてください。
ところで・・・。」
「ああ、あれだな。
ちょっと待っていてくれ。」

主人は得意げに奥へ入っていった。

「鍛冶屋さんも“LIFE”を求めているのよ。
今度受け取りに来たら、お城へご招待しましょう。」
「そうだね。
刃のない剣を理想の形と考えること自体、“LIFE”に縁があるんだよ。」

奥から声がする。

「おう、少年、ちょっと来てくれ。」

初めて会った時は「ぼうず」と呼ばれていた。
ファラを見る目が変わってきたのかもしれない。

駆けて行ってみると、そこには宝剣を入れるような立派な箱の中、装飾品など付けていない、打ったままの状態であの大無刃刀が横たえられていた。

「どうだ、お前さんの好みに仕上げられるようになってる。
注文があったら詳しく聞かせてくれ。」

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