第 10 章「無量義(むりょうぎ)」
第 05 節「獅子王の会座(えざ)」
リザブーグ城の王の間は玉座が取り除かれ、タフツァたちによって大型の円卓が置かれていた。
昼食を前に会議が行われる。
「ナズテインさん、メレナティレの救助にはどの部隊が行かれますか?」
「このたび第一部隊を再編して二つの部隊を作りました。
私の部下のエッダイーグを第十一部隊長に、同じくジスヒルを第十二部隊長に任命します。
機械車と騎馬による機動力ある部隊です。」
「魔法の応酬や、首領クラスと遭遇した場合の戦法は?」
「魔法は身につけてきていますが、実戦での使用経験が乏しく、体当たりになるかと思います。」
「では、サウォーヌのメンバーから同行をお願いできませんか?」
魔法剣士のヤエは、タフツァに言われるとすぐにも動いていきたくなる。
彼女が真っ先に志願した。
「ヤエさん、戦闘になった場合、衝突よりも回避を優先していただきたいのです。」
「それならレンジャーのピスムと、忍者ワダイルがいいでしょう。
・・・二人とも、大丈夫?」
「ええ。
相手が機械でもモンスターでも切り抜けてみせるわ。」
「自分が先回りして邪魔者どもをどかしましょう。」
タフツァはメレナティレに行ってくれるメンバーに感謝し、頭を深く下げる。
「トーハさんと技師の仲間、メレナティレの住民、それからフィヲが心配していた、ヱイユの所在もお知らせください。」
通信にはトーハらが開通させた王国内要衝をつなぐ電気ネットワークが生きているという。
ナズテインが付け加えた。
「ミナリィ港との回線は、こちら側で切断することも接続することもできます。」
ここでスヰフォスが話し始めた。
「我々の作戦で最も重要なことは、シェブロン先生を無事、リザブーグへお連れすることだ。
ロマアヤ国は艦隊を率いているゆえ、多くの兵がミナリィに駐在することとなろう。」
「その通りです。
敵の狙いもまた先生であるならば、指一本触れさせぬ弟子の戦いが僕たちの全てとなります。」
しばらく緊張した空気が流れたが、ソマが口を開いた。
「ミルゼオ国とLIFEリザブーグの間に小口(こぐち)の郵便が再開したの。
それでね、旧セト国の戦後処理にあたってくれていた、ルアーズさんとお仲間が、フスカ港に着いたんですって。」
LIFE騎士たちの間に「おおっ」と歓声が上がった。
彼女らの強さは身をもって知っているからだ。
「丁重にお迎えしなければ。
セト国とワイエン列島の戦士たちも加勢に来てくれているそうじゃないか。
王国内の敵は、これまで戦ってきた相手と全然異なっているはず。
まずじっくりお話ししなければ。」
引き続きナズテインが騎士団の動きを説明した。
「ミナリィへ向け、馬車でレンガーの第二部隊とヌザルムの第六部隊を先発させます。
両部隊に防塁を築いてもらい、・・・第三部隊ウタック、第十部隊ハッボスに敵陣を突き破ってもらう。」
年若い同僚ではあるが、皆ナズテインを尊敬するようになっている。
名前を呼ばれると、勇ましく返事を響かせた。
「ここからがLIFE騎士団のメイン・タスクとなる。
我が第一部隊を中心に、第四部隊オルグス、第五部隊マシンク、第七部隊ラッツピン、第八部隊バグティムトの各部隊は、死力を尽くして敵を殲滅する。」
それを聞いてタフツァが驚いた。
「総動員で!?
ここの守りはどうします?」
スヰフォスがニヤリと笑った。
「レボーヌ=ソォラ遠征に連れていかなかった予備軍を、ワシが率いて戦おう。
旧王国騎士が集まって、大変な数に膨れ上がっておるぞ。」