The story of "LIFE"

第 10 章「無量義(むりょうぎ)」
第 05 節「獅子王の会座(えざ)」

第 06 話
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「ザンダ、助かったよ。
父君の雄姿と重なって見えるようだ。」
「先生、お待たせしてしまい、申し訳ございません・・・!!」
「はっはっは、きみらしくないんじゃないか。
それにしても太刀筋がいい。
ルビレム君の型を習ったね。」
「へへへっ、全部お見通しですか。」

ノイはザンダとの再会を喜んで笑みを浮かべていたが、これくらいの相手を倒せないようでは逆に皆の足を引っ張るのではないかとさえ感じた。
博士が言うように、ザンダのなんと頼もしくなったことか。

「ここじゃあ魔法が利かないっていうから、おれもファラくんとおねえちゃんが編み出した『ゼエウ(空)』の魔法陣を使ってみたんだ。
おおかたファラくんが考えたんだろうけど、真ん中の文字はおねえちゃんだね。
だって、『この文字、ずうっとわたしの頭の中にあったの!』、なんて言ってたからな。
頭ん中からっぽ、って意味じゃないぜ、へへっ。」
「魔法使いが剣の技を磨いているように、ノイくんにも魔法の使い方を伝授しよう。
今見た通り、“LIFE”の究極は現象を起こすこと自体ではないんだ。」

兵の指揮をとっていたムゾール=ディフがシェブロンの前に来て膝を着いた。

「この度のご受難、申し訳なく存じます。
ロマアヤは全て先生のお弟子の手で勝つことができました。」
「爺(じい)や、そのように身を低くなさらないでください。
あなたがいなければ弟子たちも戦えなかったでしょう。
本当によく復興を遂げられた。」

後方で礼をとっている若い兵士たちも、シェブロンとゼオヌール公、公子ザンダ、老ムゾールの深い絆を目の当たりにするにつけ、感涙を禁じ得なかった。

「では、先を急ごう。
各地の情勢を聞かせてほしい。」

タフツァ率いるLIFE騎士団は、最後まで敵対する一部の王国騎士たちをリザブーグから追放し、それぞれが家族を救い出すことに成功した。
4つの城下町にも“LIFE”の旗がなびいているという。

「小竜リールが最後に持ってきた手紙はソマさんからで、無事にリザブーグへ入れたこと、ヱイユさんがメレナティレに向かったこと、までが書かれています。
けど、空に羽根付きモンスターが溢れてきたんで、もうこいつを行かせることができなくなっちゃって・・・。」

リールはザンダの船室で暮らしていた。
重要な手紙を持たせて、敵にでも奪われれば通信が逆効果になってしまう。
それに上空は小竜を捕食するモンスターも見受けられた。

「すると、メレナティレにいるトーハさん、ファラくん、そしてフィヲが、無事ヱイユくんと合流できたかどうか分からないんだな。」
「まさに最激戦地となりましょう。
我々がミナリィ港を占領できれば、王国にはかなりの痛手となります。
当初ヱイユ殿からはそのようにご依頼がありました。」
「う~ん、メレナティレに港ができたんだろ?
じゃあ、そっちに攻め込むのも有効だよな・・・。」
「タフツァくんからは何と言ってきている?」
「『先生をお迎えする準備が整いました、どこへでも展開できる状態です』って。」
「分かった。
ではミナリィへ入港し、味方になる者は皆つれてリザブーグへ。
どうしても敵対する者は一時捕縛しておくよう頼む。
また、行軍は機械兵との戦いが前提になる。
攻守に長けた部隊を編成しよう。」
「対機械戦でしたら戦車がございます。
まずは城下まで、強行突破もできましょう。」

ミナリィ港からリザブーグへ、車を使って3時間ほどの道のりである。
主艦の動きが決まった時、シェブロンは重ねて、メレナティレへ一艦割いてほしいと念願した。
王都が混乱していれば収拾し、避難させる必要があれば現地の船を操って輸送等に当たれる船乗りを送り出したい。
また、回避できない戦闘が起こることを想定して、戦力を割く必要もあった。

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