第 10 章「無量義(むりょうぎ)」
第 05 節「獅子王の会座(えざ)」
最初の一羽が急降下を始めると、二羽、三羽と続いた。
ノイは力では到底かなわないので、博士に避(よ)けるべき方向を示して盾で防ぐ。
二羽目の強襲を見て避(さ)けきれないと思った。
「草叢(くさむら)へ伏せてください!!」
ノイは二羽目が地面との激突寸前に向き直った下へ滑り込み、一太刀浴びせる。
回転剣撃で左の足に重傷を負わせると、右の足が掴みかかってきた。
辛うじて引き上げられることは回避したが、大鳥はいったん飛び上がり、再びノイを踏みつけるように下降して、両方の足で散々に蹴散らしてきた。
三羽目はシェブロンに襲い掛かっている。
彼は弟子たちが完成させた“LIFE”の魔法陣で、鍬(くわ)から持ち替えた愛用の杖を構えて応戦する。
ノイの剣と違い、打撃によるダメージは限りなく小さいが、悪魔の眷属としての鳥たちに深刻な苦しみを与えた。
“LIFE”に背く勢力に加担することへの責め苦である。
キュィーン、と鳴き声を放ち、ドシンと地面に横たわってしまった。
シェブロンは更なる刺客に備えて空を見上げた。
すると、入江に下りる洞窟の方から、数手(すうしゅ)の鏑矢(かぶらや)が上がって、たちまち鳥たちを退散させるのが分かった。
ピンチなのはノイである。
護衛を依頼した博士が、自ら騎士の危機に加勢する形となった。
だが、左足に負傷して激昂したこの鳥には、博士からの一撃が当たらない。
飛び上がっては下降して、ノイを苦しめている。
そこへ遠くから、Y字型のプレートが、ブーメランのように回転して鳥の頭部にヒットした。
弾んで転がったその形に、シェブロンとノイは、なんとも懐かしく、頼もしい思いを抱く。
「なんだよノイさん、腕が鈍ったんじゃないの!?」
家来を率いてやってきたのはザンダだった。
「やい、この真っ黒ドリ!
この方(かた)をどなたと心得る、無礼だぞ!
おれが相手だ!!」
ザンダはファラの無刃刀に習った形状の剣を佩いていて、それを高く抜き上げると、大鳥を挑発するように礫(つぶて)のようなものを投げつける。
上空で破裂したそれは、一種の花火だった。
「石矢を放て!
降下を誘え!!」
先端に石の鈍器をつけた矢が、次々に大鳥に当たる。
だが先の挑発によって、敵のターゲットはザンダ一人になっていた。
急降下の嘴(くちばし)が少年に襲い掛かった。
すると、後方にいたドガァが躍り出て、ザンダの体を跳ね上げると、さあ来いとばかりに咆哮した。
ブレーキがかかったように動きの鈍る大鳥の後頭部めがけ、宙転したザンダの剣閃が走る。
ガツン!
そこにも師と同じ“LIFE”の魔法陣が描かれていた。