第 10 章「無量義(むりょうぎ)」
第 05 節「獅子王の会座(えざ)」
激しい電光が目を眩(くら)ませ、雷鳴が響き渡る。
目を開けたファラの前に、長く大きな黒い影が立っていた。
逆光で顔は見えないが、その形から、魔族の者であることは分かった。
なぜ“LIFE”の魔法陣の中へ入れたのか。
跳ね除けてくるほどの魔族がいるのだろうか。
驚きと恐怖の疑念が攻撃を一瞬間、遅らせてしまった。
生き物の骨でできた鎌の先が飛んでくる。
とっさに構えた無刃刀が、真っ二つに砕かれてしまった。
骨の鎌は鋭利ではなく、斬り裂かれることはなかったが、ドスッと肩に打ち下ろされ、王の間の床に座り込む形勢となった。
ファラの目に黒紫色の電光が焼け付き、全身が痺(しび)れて動けない。
階下で爆音が起きた。
石の砕ける音がする。
1階のヨムニフも、魔族によって連れ去られてしまうのか・・・。
「うわあああああああ・・・!!」
バタリと前へ倒れるファラに、悪魔イン=ペリージラムが掴みかかろうと手を伸ばした。
「ファラくん・・・!!」
フィヲが階下から駆けてきた。
悪魔が振り返り、ファラにかけたと同じ放電現象を振り翳(かざ)す。
フィヲは金属でできた細い杖だけで敵の魔法を弾き飛ばした。
そのまま、イン=ペリージラムの巨大な体躯を魔法の力で床まで引き倒す。
カン、と鳴って、フィヲの杖が倒れた悪魔の頭部に打ち付けられていた。
“LIFE”の魔法陣が浮かぶ。
悪魔は溶けてなくなった。
「ああっ、ファラくん・・・!!
体が冷たくなって・・・。」
フィヲはファラの体を抱きしめ、熱を与えた。
二人の体を緑色の光が包んで、ヒーリングが起こった。
「さあ、ここから脱出しましょう。
1階の壁が壊されたの。
ヨムニフももういないわ。」
フィヲは二人分の飛翔を使って破れた壁のところまでファラを連れて行き、そこで“キュキュラ(総力発動)”を使った。
「心配しないでね、リザブーグへ行きましょう。」
こう言ったフィヲは、自分とファラを“光”に変えて、瞬時に南東の方角へ飛び去った。