第 10 章「無量義(むりょうぎ)」
第 05 節「獅子王の会座(えざ)」
ファラの中の闘神がついに覚醒した。
彼はフィヲにヒーリングを与えると、まず王城の上へ降り立った巨大な悪魔の棟梁に戦いを挑んだ。
猛然と飛び上がり、すぐにクザロ=ケケの正面へ至る。
何かを言おうとして口を開いたクザロの口元に、無刃刀を突っ込んだ。
物凄い爆発が起こって、悪魔の棟梁はそのまま刃の無い剣で真っ二つに斬り裂かれる。
残った頭部を剣先で突き割った。
「さあ、ザコばかりならば全滅させてやるが、どうなんだ!」
ホッシュタスが助け起こされていた。
ファラの標的は当然の如く、この老獪(ろうかい)な人心使いへ向けられた。
助けた悪魔は“LIFE”の魔法陣を込めた一太刀の前に、氷が溶けるように消え去った。
ガツン、とホッシュタスに打撃を与える。
左の上腕で剣を受けたホッシュタスは、剣撃でロニネを破られたことに驚き、取り乱した。
そこへ別の悪魔が現れ、ファラの剣をかわしてホッシュタスを肩に担ぎ、飛び去ってしまった。
あまりの素早さに、追跡しようと思う間もなく見えなくなった。
「くそっ・・・!!」
雷鳴が轟いた。
ファラはテダンを奪われて発動できなくなっていたが、本来“生命”に具わるところの全ての魔法は失われていない。
彼の一念に呼応して、電光は幾多の悪魔たちを射落としていた。
次はグルゴスだ。
王の間へ降りると、そこにも魔族の者どもが充満し、ファラを見て殺意を剥(む)き出しにする。
「束になってかかってこい!!」
部屋中に“LIFE”の魔法陣が広がった。
多くの者は溶けてなくなったが、実体のある魔獣、コウモリの翼を持った人間などは苦しみの絶叫をあげている。
ズドーン、と耳を聾せんばかりの砲音が轟いて、外の電光が鋭く部屋に射し込んだ。
外から城壁が破られたのだ。
その時やっと、ファラは倒れたグルゴスの姿を見た。
しかしすでに手遅れだった。
外から入り込んできた、有翼の野牛のような大型モンスターが、背に一人の黒騎士を乗せて現れたのである。
よく見るとそれは、コウモリの翼を得たガトレーンだった。
「グルゴス様は渡さない。
少年よ、今度会ったら決着をつけよう。」
「待て、今この場で、お前を叩きのめしてやるッ!!」
躍り掛かるファラに、横からロールウェールが割って入った。
不意を突かれたため、壁まで飛ばされ、激突した。
「アッハッハ、まだ幼いのね。
・・・さようなら、ぼうや。」