第 10 章「無量義(むりょうぎ)」
第 04 節「後継の時」
バリアが破られれば、すぐ目の前の屋上に倒れているホッシュタスが救援を得てしまう。
ヱイユは我が身が滅ぼうともこの場を護らなければと心に決めた。
『ソマ、俺はいつでもお前の側(そば)にいるからな・・・!!』
トーハが測量し、フィヲが立ち上げた、王城を囲む大型の方陣の、ちょうど中央にヱイユは陣取った。
一撃受け、また一撃、血に飢えた無数の悪魔たちの餌食となる。
よく見ると、昔戦ったことのある悪魔の棟梁が交じっていた。
悪魔クザロ=ケケがヱイユに宣告した。
「小僧、だいぶ弱くなったようだな。
お前の死ぬ時刻を教えてやろう・・・。」
それは今からほんの数秒後を指していた。
『金翅鳥(こんじちょう)よ!』
遠く、オルブームのヤコハ=ディ=サホから、須臾(しゅゆ)の間に呼び呼ばれて現れたのは、以前の真っ黒い翼の「迦楼羅(かるら)」ではなく、金色の翼に輝く鳳(おおとり)の姿だった。
幾万の衝撃波が有翼獣を払い飛ばし、コウモリの翼を持った魔人たちはあまりの光の眩しさに何も見えなくなった。
だがクザロ=ケケは、骨でできた巨大な鎌でヱイユの生命を奪いに来る。
ヱイユは真っ向から受けて立った。
天に電光が走ってクザロの頭上に迸る。
その瞬間、ヱイユは斬撃モードに変じた妖刀ヤマラージで斬りつけていた。
ドスッ、と胸を貫くものがあった。
ヱイユは先のクザロの宣告を思い出した。
胸元が温かい。
なぜか目を開けることができた。
「ヱイユ・・・。
まだ死んだらいけない・・・。」
彼の体を抱くようにして、かわりに致命傷を受けたのはヒユルだった。
「会いたかった・・・。
今度生まれてきたら・・・。」
「ヒユルッ・・・!!」
力なくずり落ちるヒユルが、自らの胸を貫通してなおヱイユの胸元まで届いた槍の傷口をなめた。
あまりのショックに、そのままヱイユは何も為しえず、ヒユルとともに地上へ降りていった。
ガルーダの召喚も途切れる。
ついにフィヲのバリアは破られ、悪魔たちがメレナティレ城へ殺到した。
全ての魔力を使い果たしたフィヲは、やっとの思いで追い詰めた敵地を奪回されて、その場へ倒れ込んでしまった。
一角馬モゼイラに乗ってファラが駆け付けたのは、まさにこの時だったのである。