第 10 章「無量義(むりょうぎ)」
第 04 節「後継の時」
ファラはキツネに「ラナシーヴ」、一角馬に「モゼイラ」と名付け、メゼアラムの魔法陣に加えた。
ニムオーにヒーリングを与える。
「テンギの動向を調べてほしい。
ぼくは一度メレナティレに戻る。
お前もすぐ戻って来い。」
そう言ってニムオーを空に放つと、森の危険を探るため、ラナシーヴとヴィスクをも放った。
「悪さをしそうな魔獣がいたら倒して連れて来てくれ!
人間の術士には近寄るな!!」
ファラはモゼイラの背に飛び乗ると、首にしがみ付いて引き返した。
一足先に王都に着いたヱイユは、城を囲む巨大な方陣で、フィヲがただ一人、空からの侵入者を阻んでいるのを見た。
翼を持った魔獣が充満している。
子供の頃に見た黒い翼人たちとの戦いを思い出した。
「おお、来てくれたか!」
トーハだ。
彼は方陣の距離計算を終えると、機兵を使って外の敵と戦っていた。
「よくご無事で・・・!!」
「ここを凌(しの)がんとな。
博士は、まだか。」
ヱイユは周囲を見回し、耳打ちするように言った。
「今日明日にも。」
トーハは力を込めて頷いた。
メレナティレも、リザブーグも、ミナリィ港も、決着しておかなければならない。
その時、フィヲの悲鳴が聞こえた。
「いけない、バリアが破られる・・・!!」
ヱイユが飛翔して王城の上空へ急ぐ。
フィヲの方陣を攻撃した魔獣を撃ち落したが、次々集い来る魔力を持った有翼モンスターに、何重にも囲まれたようだ。
「おのれ・・・!!」
竜王ゲルエンジ=ニルは滅び、ガルーダは北の大陸オルブームの守護に着かせている。
灰竜アーダはリザブーグへ行かせてしまった。
これだけの魔物を相手に、人間の姿で戦わなければならなかった。
ドウーン!
ドーン!
地上からトーハや技師たちが魔法弾を撃ってくれている。
しかし、それでも間に合わぬほど、大空は魔族の翼で覆われていた。