第 10 章「無量義(むりょうぎ)」
第 04 節「後継の時」
怒りに狂った赤い目を剥(む)き出して、フィフノスは魔法を立ち上げた。
渦巻くトゥウィフである。
ファラはアンチ・トゥウィフの盾で防ぎ、その切削現象を操(あやつ)り返して術士に返す。
フィフノスにもロニネがかかっていただろう。
それは消し飛んだ。
すかさず相手の胸部を剣先で突く。
フィフノスは後方へ吹き飛んで背中を強打した。
だがファラは追い討ちをかける。
立ち上がれない相手の腕を掴んで引き上げた。
パチン!
平手打ちである。
ファラはその一撃に“LIFE”の魔法陣を込めていた。
ガクガクと震えて大地にうつ伏したフィフノスは、初めて人の言葉を放った。
「こんなことなら早く殺しておけばよかった・・・。」
戦いを長引かせるのは無意味であることがはっきりした。
ファラはその背を踏みつけ、剣先を顔のすぐ横に突き立てて言った。
「お前は野放しにできない。
ここで森の養分となるか、“LIFE”を守護する鬼となれ・・・。」
フィフノスはグッと地面に押し付けられ嘔吐する。
周囲に魔法陣が浮かび上がっていく。
「醜い餓鬼め!
よくもそこまで“生命”を貶(おとし)められたものだ。
正しい魔法陣を刻み付けて出直してこい!!」
“LIFE”の魔法陣だ。
永きにわたり、背き背いて生きてきたのである。
想像を絶する苦しみが、責め苦がフィフノスを襲い、制圧した。
もはや発動しようにも、何も起こらなかった・・・。
そこへヴィスクが獲物を生け捕って帰ってきた。
この森の主である、魔力を持ったキツネである。
またニムオーは額に角を生やした馬を捕らえてきた。