第 10 章「無量義(むりょうぎ)」
第 04 節「後継の時」
そうしている間にファラの魔力が満ちてきた。
対照的に弱った相手を、まずゾーから解放した。
「さあ、まだ戦うか?
戦意があるなら見せてみろ!」
当然、言葉は通じないが、翼竜ニムオーは牙を剥(む)いた。
先のようには翼に力が入らないらしい。
重々しく起き上がると、後の2本足で立とうとした。
戦いに臨んで、ファラに容赦はない。
盾を翳(かざ)しながら一撃狙った。
右の方から尻尾が繰り出されたので、それを飛んでかわし、敵の左肩を剣先で強突する。
上体を捻(ひね)るようにして、ズシン、とニムオーは横たわってしまった。
大地の上で七色の光が魔法陣を描き、スーッと消え入りながら、ニムオーをも消し去った。
「か、怪物はどこに・・・!?」
「・・・封印してしまったのですか?」
これがファラの本領である。
メゼアラムの師、召喚士ムヂの顔(かんばせ)が浮かんだ。
亡き師を思うと涙が溢れてくる。
魔獣を捕らえられるようになるまで、何度も敗れては助けてもらった。
ニムオーに会って、当時倒せなかった魔獣との戦いを思い出したのである。
「さあ、行けっ!!」
今捕らえたばかりの魔獣を森に放つ。
全身がファラの髪の色に似た水色の光で包まれていた。
「よし、お前も行っておいで!!」
狼のヴィスクだ。
召喚の魔法陣に“LIFE”を込めてある。
どのような戦い方をするか楽しみだ。
2体とも、勢いよく飛び出して行った。
ふと目を上げると、木々の切れ間から、翼を持つ魔獣が大空を満たしているのが見えた。
ファラがニムオーとヴィスクに劣らぬ快活さで駆け出すと、今度は大蛇の姿をした魔獣が現れた。