第 10 章「無量義(むりょうぎ)」
第 04 節「後継の時」
「ソマ、森中に『黒い翼』を持った術士や剣士が溢れている。
悪魔結社マーラの首領・フィフノスも来た。」
「えっ!?」
「タフツァやファラと連携して、出方を決め直すしかない。
アーダに乗ってリザブーグへ行ってもらえないか。」
ソマはしばらく黙っていたが、確かに自分がメレナティレに行くよりも、タフツァと合流する方がいいと思った。
そこにはヤエもいるのだ。
「ヱイユくんは・・・?」
「俺はファラとフィヲ、トーハさんを助け出す。
メレナティレに奴らの足場を残したくない。
王城を落とすつもりだ。」
「リザブーグを決戦の地にするのね。」
「ああ。
王国港ミナリィはザンダたちに叩いてもらう。」
許されるならば二人は一晩くらいともに過ごしてつながりを深めたかった。
当分、離れて戦わなければならない。
その思いは、きっと生きて再会を果たしたいという強固な意志となっていった。
アーダが呼び出され、ソマを乗せて南東の空を仰ぐ。
「ソマ!
お前は強い。
誰が相手でも負けないと、俺は信じている。」
「ありがとう。
次に会える日まで、あなたのために生きるから!
・・・いつも“祈り”を絶やさないで。」
二人の手と手が離れる時、ヱイユは力づけるように笑ってソマを励ました。
休む間もなく、先の戦場の方から、フィフノスの手下と思われる剣士が翼を羽ばたかせながらふわりふわりと飛んできた。
ソマに追っ手がかからぬよう、時間を稼ぐためにも、できるだけ多くのことを聞き出しておきたい。
「お前たち、マーラの残党か?」
「ふはははは、同等に扱われては困るな。
我らはディスマ封印の儀式以来、地下深淵に潜んで王国を呪い続けた一族の末裔。
人の姿をした悪魔。
この国を滅ぼし、魔王による支配を打ち立てる。」
「ほう、人間であって悪魔だというのか。
それは厄介だ。
だがそんなに甘くはないぞ。
お前たちが牙を剥(む)くならば、何度でもその牙、へし折ってくれよう・・・!!」
コウモリの翼ではさほど滞空時間が得られない。
彼らの体は合成生物のそれと同様に作られているらしかった。
妖刀ヤマラージが形を変える。
斬撃モードではなく打撃モードである。
16年前に空を覆い尽くした精神体の悪魔とは異なり、生命体である以上、殺めることはできないからだ。
最初に躍りかかった一人をヱイユはあっさりと叩き落した。
矢が放たれた。
剣で払うと、それが爆発した。
全身に張り付くロニネで守ったが、少し後方へ退(さ)がった。
「面白い・・・!!
手加減はいらないようだ。」