第 10 章「無量義(むりょうぎ)」
第 04 節「後継の時」
「ウギャーーーーー・・・!!!」
意識が戻ったヒユルは、目の前の怪物の姿に、心底絶叫した。
振り払おうとしても、がっちりと掴まれて逃げられない。
そのまま抵抗できず、弄ばれ続けた。
一度テンギが果てた所で、ヒユルは渾身の憎しみを込めて顔面を叩(はた)き、額を蹴飛ばした。
これによって、再びテンギの情欲が燃え上がったが、悪魔カコラシューユ=ニサーヤの力が目覚めてヒユルに注がれた。
風と衝撃を伴うピンク色の破壊現象が起こって、テンギは裸の肉体をズタズタに裂かれる。
いきり立ち襲い掛かったが、陰部に致命的な傷を受けた。
うずくまって苦しみもがくテンギを、ヒユルにかわってニサーヤが攻撃した。
召喚された魔獣も実体を持つ。
テンギの生殖器は5つあり、1つを損傷しただけではまだ動ける。
かの小さな悪魔に向けて一撃、二撃、三撃、・・・武器はなくとも、拳の威力が絶大である。
ニサーヤはボコボコに殴られ、またしても死に瀕した。
そこを、衣服を纏ったヒユルが魔法陣に戻す。
「このムカデ野郎!
その手足首、バラバラに斬り刻んでやるからな!!」
ヒユルはパピルスを繰り出して、テンギの首へ巻きつけた。
胸筋を張って踏み止まるテンギに、ヒユルは魔法の力で締め付け、引っ張った。
「うぐ、ぐ、がごご・・・!!」
2対4本の腕を使ってパピルスを引き千切ろうとしたが、ヒユルは電撃を加える。
「うぐおおおおおおお・・・!!!」
首にまで電流を受けて、パピルスに触れた箇所が黒焦げになった。
それでもテンギはヒユルの体をあきらめられない。
もう一度、我が物にしたいと思った。
「よくもあたしを嬲(なぶ)ったな・・・!!!!!」
ヒユルは激昂している。
まだ死なないのを見て、パピルスを長く長く伸長させると、蛇のように素早く這わせてテンギの胴を雁字搦(がんじがら)めにした。
そして放電である。
同時に先のピンク色の旋風が起こり、テンギの体を切り裂いた。
絶叫があまりにうるさいので、テンギの頭部を水の球体に閉じ込めてやった。
呼吸できないことになる。
鬼神は完全に死を待つだけと思われたが、ヒユルが更に、不自然な長さの袖の中へ隠し持った金属の爪で、テンギの左胸を貫き通した。
だが彼女の復讐にはほど遠い。