第 10 章「無量義(むりょうぎ)」
第 04 節「後継の時」
瀕死の衰弱状態から意識を取り戻した鬼神テンギは、ホッシュタスがファラから奪い取ったズーダ、ザイア、テダン、ググの亜流四属性の供給を受けてみるみる回復した。
武器はソマに溶かされて金属板のようになっている。
彼はカーサ=ゴ=スーダを追放された幼少時以来、女性に対する蔑視が異常であっただけに、ソマに苦しめられた記憶がよみがえって憎悪とコンプレックスの塊のような状態だ。
目の前に立っていた大木を、天からの雷電で真っ二つに裂くと、意趣晴らしに2、3の木々に落雷させた。
腹の底から嘲笑が沸き起こって、大声を響かせた。
虐待癖から、テダンと同様のやり方で、ズーダの高熱、ザイアの低温がいかに殺傷力を持つかに酔いしれた後、残るググという魔法が何であるか、しばらく分からなかった。
しかし魔力を強めていった結果、周囲に転がっていた彼の武器、すなわちソマによって板状にされた金属片がガタガタと動き出したため、初めて磁界を司る魔法であると知る。
電磁誘導の原理は知るべくもなかったが、敵の剣を磁力で搦め取るイメージはすぐに沸いてきた。
何も苦労せず、これらの絶大な魔法力を手にしたことに、気違い染みた快感をどうすることもできない。
飽き足らずに、得たばかりの魔法を連発してみた。
どんなに撃っても魔力が尽きない。
そしてついに、フィナモとズーダを合わせて用いることにより、常軌を逸した高熱現象を起こし得ることを覚えてしまった。
彼は完全に気が狂っていた。
一刻も早く、血祭りに上げる獲物がほしいと思った。
6本の足でおぞましい轟音を立てながら周囲を歩き回っていると、そこに女が倒れていると気付いた。
鬼神テンギは、初めて魔天女ヒユルを見た。
著しく消耗したヒユルは、テンギのような供給もなく、眠り続けて目を覚ますか、そのまま死んでしまうかの瀬戸際にいた。
その腕を引っ張って持ち上げる。
美しい容姿をしていた。
衣服を剥ぎ取り、美しい体が露わになると、女狂いのテンギはもはや歯止めがきかなくなった。
草叢といって、彼ほどの巨体を隠す場所はない。
誰も人が通らないだけで、公然と暴行が繰り返されていく・・・。