第 10 章「無量義(むりょうぎ)」
第 04 節「後継の時」
「力、戻るかしら・・・。」
「また奪われたみたいだ・・・。
どの魔法だろう・・・。
う、うわああ!!」
「ファラくん、今は発動はやめて!
早くここを出ましょう。」
屋上にホッシュタス、王の間にグルゴス帝、1階にヨムニフがいる。
いつまでも押さえつけておくことはできないし、野放しにすることもできない。
「フィヲ、彼らを“LIFE”の魔法陣に閉じ込めてやればいい。
ひどく苦しむには違いないが、生命を害することはない。
その苦しみは、彼らの反“LIFE”に起因するものだ。
やってきたことの報いは、全て一身に受けてもらう。」
彼女は頷いて、早速ホッシュタスを“究極魔法陣”の中に捉える。
神々しいほどの七色の光だ。
「フィヲ、おめでとう・・・!!
これがシェブロン先生の描かれた“LIFE”だよ!!」
自ら発動させた魔法の威力に、フィヲは気を失いかけて座り込んでしまった。
ファラがよろけながら立ち上がって彼女に手を差し出す。
「ここはもう大丈夫だ。
グルゴスにも与えてやってほしい・・・。」
「消耗は・・・!?」
「おそらく詠唱の分だけだろう。
誰にでもすぐ発動できるわけじゃない。
きみがこれまで生命に蓄えてきた“光”の表われだからね。」
そう言われると、フィヲは顔を赤らめた。
「何回でもできるかしら・・・??」
「きみが生きている限り、いつでも、何度でもできるはずだ。
大事なことは、“それ”が全ての人に広がっていくことなんだ。」
ファラは促して、フィヲを先に行かせ、グルゴスをも“LIFE”の光で捉えてほしいと言った。
実は、まだフィヲに思い出させたくないことがあった。
それは今ホッシュタスに奪われた4つの魔法・・・。
自分の生命、自分の体のことだけに、発動を試みるまでもなく分かった。
亜流の四属性である、冷・熱・電・磁の魔法が失われたらしいのだ。
『テンギの体に具(そな)わってしまうのだろうか。
・・・ヱイユさんが危ない。』
フィヲに追いついたファラは、彼女の肩を借りながら階段を下りた。
体力の消耗、魔法の喪失とともに、心細さと不安が襲ってくる。
このまま死んでしまうのではないかとさえ思われた。
「ファラくん、寒いの・・・?」
王城内の気温は高かったが、4つの魔法を失ったファラはぞくぞくするようだった。
フィヲは恥ずかしそうにファラの体を抱きしめると、限りのない優しさで囁く。
「わたしとあなたは二人でひとつ。
ずっと前から同じ“LIFE”に生きているのよ。」
心も体も温かくなる。
魔法のことは彼女に任せて、自分は父ツィクターのように、LIFEの剣となり盾となろう。
この時、彼はそう決心していた。