第 10 章「無量義(むりょうぎ)」
第 04 節「後継の時」
LIFEの味方となった王国兵たちは、皆一様にファラの強さ、フィヲの不可思議な護りの力に舌を巻いていたが、少年がたった一人でホッシュタスを追って行くと、さすがに心配になり、後に続こうとした。
それをグルゴス帝が遮った。
テンギほどではないが、体が大きい。
『予に歯向かう者はこうなると知れ・・・!!』
接触した兵らの胴体が捻じ曲がった。
ふっ、と息の詰まる音がして、声も出せずに捩(よじ)れて死んでいく。
地面に転がってなお、苦しくのた打ち回る者もいた。
騎士たちは誰も魔法を使えないのである。
前が総崩れすると、階段は押し合いになり、踊り場へ倒れ込んだ。
逃げてくる兵士とすれ違いながら、フィヲは早く外へ逃げるようにと言った。
これ以上、犠牲を出してはならない。
動けない者の救助を頼みながら進む。
やがて騎士たちのいなくなった王の間へ、フィヲは単独で立ち入っていた。
背中を向けるグルゴスはやはり大きく見えたが、彼女は恐怖を感じない。
ギロリと睨んだ横顔、その眼光に触れてもなお、何とも思わなかった。
屋上ではファラとホッシュタスの応酬が始まっていた。
町人を装っていた軽装に、わずかな防具を着けただけである。
剣と盾は愛用のものを持つ。
それらも相当、消耗してしまっていた。
ホッシュタスの手から、無数のワイヤーが地面に走った。
ファラの足元を通って背後にも回った。
バッ、と強烈な閃光がワイヤーに沿って迸(ほとばし)る。
目を覆うとともに、靴に焦げ目が入ってしまった。
ファラは身を軽くして浮遊した。
ワイヤーと平行に、ホッシュタスの足元を通る直線軌道のググ(磁力)を起こす。
一気に威力を上げると、細い電線は集まってきて束となった。
そこへファラがテダンを落雷する。
バチン、と電撃が弾けて、ホッシュタスはワイヤーを捨て、後方へ退いた。
不気味に余裕の笑みを浮かべている。
ファラはもう一撃、ダメージを与えようとした。
しかしその時、屋上の四つ角から強烈な闇が起こってファラに襲い掛かった。
「ぐわあっっっ・・・!!!」
五体が引きちぎれそうだ。
必死に抵抗した。
ついに意識を失って、バタリと前へ倒れる。
そこへ、グルゴスの身動きを封じたフィヲが駆けつけてきた。