The story of "LIFE"

第 10 章「無量義(むりょうぎ)」
第 04 節「後継の時」

第 01 話
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勇気は自ら鼓舞していくべきものだ。

他者からの励ましもあるだろう。
しかし他者の作用に期待して待っているだけでは、決定的な勝利は掴めない。

自らを奮い立たせられる者だけが、真に他者をも奮い立たせることができる。

決戦の時が迫っていた。
一刻の猶予も許されない。

それでもなお、迎えた局面は遅々として打開されない感があった。

ヱイユとソマは、世界で最も危険な二人の敵と対峙しながら、その足止めの役を果たしていた。
彼らの戦いには力と力をぶつけ合わせて削り合う苦しさがある。

相手に与えた苦しみと打撃は、そのまま自身を消耗させていた。

一方ファラとフィヲは、住民たちを安全な場所へ誘導することで、少しずつ味方を増やした。
家族に呼ばれれば王国騎士や憲兵といえども心を変えざるを得ない。

こうしてメレナティレでは、機械兵と王国兵を味方につけながら王城を攻める形勢が生まれていた。

また技師トーハは、若い二人を置いて自分だけ王都を脱出する気になれず、仲間を説いて軍政への反対運動を起こした。

今、テンギのいないメレナティレ城に残っているのはどのような人々か。

邪師ヨムニフ。
新国王グルゴス1世。

先陣切って戦うファラは、今度の敵こそ母の仇、父の仇という壮絶な覚悟で、次第に膨れ上がる新たな仲間たちとともに攻め上げていった。

同じ頃、タフツァ率いるLIFE騎士団はリザブーグの街路を駆けながら、それぞれの家族を助け出し、近隣の住民に呼びかけて、反メレナティレの勢力を拡大していた。
古くから王国の中心地であったこの町にLIFEの砦を築くことはとても重要である。

一人一人が師と慕うシェブロンを、流刑地から助け出すには、敵の入り込めぬ最強の本陣を構えておかなければならない。

タフツァはヤエの協力を得て、師が最も苦心し“LIFE”のために難を受けたこの地を、必ず一大拠点に変えてみせると決めた。
積極的に交戦することで、敵対する根拠のない者の心を正していった。

「世界は“LIFE”の実現を望んでいる!
今こそ生命の闇を振り払い、王国の魔性と決別する時だ・・・!!」

タフツァの雄雄しい叫びに、LIFE騎士が、王国騎士が、次々に呼応していった。

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