第 10 章「無量義(むりょうぎ)」
第 03 節「帝都の暴政」
ソマは肉弾戦を挑まない。
テンギを心の底から軽蔑し、一歩も前へ出させないと決めた。
「ぐはっ・・・!!」
地面に脚が埋(うず)まるほどに強力なゾー(重力)をかけ、杖の一振りでテンギの頭部を大地に叩きつけた。
「全ての武器を捨てなさい。
さもなければ、どうなっても知らないわ。」
憎憎しげに面(おもて)を上げ、ソマを睨みつけたテンギは、ヱイユに弾き飛ばされた斧以外、全ての武器を強く握り締めて彼女の言葉に逆らって見せた。
「まだ子供なのね。
・・・残念だわ。」
足元へ縛り付けられて身動きの取れないテンギに、ソマはズドン、ズドンと、突震を加える。
一撃目でテンギは絶叫を上げた。
三度目の突震でトリプルソードの他、両手槍も取り落とす。
大地ばかりでなく、森の木々までが怒りで大暴れするように上下へ激しく揺れている。
「生きるか死ぬかは選ばせてあげましょう。
さあ、どうする?」
しばらく間を置いて、相手の態度を見ていた。
テンギは気が狂ったように両手から炎を起こし、もう一度周囲へ放とうとしたが、次の瞬間に消し止められてしまった。
「聞こえないの!?
まだ地震が足りないかって言っているのよ?」
女性を散々蔑んできたテンギは、この時初めて恐れを成した。
10本の脚がガタガタと震え出す。
「馬鹿な人・・・!!
何もかもその体のせいにして、勉強することを怠ってきたのね。」
散らばっていたテンギの武器が、真っ赤に熱し始めた。
その一つ一つはロニネによって外界と遮断されていたが、付近の枯れ木は炎を上げた。
大地からソマへのヒーリングが加速して、神々しいほどの緑色の光が彼女を包んでいる。
ここに至って、テンギはソマに勝てないと観念したようだ。
ドロリと解けた金属の武器は、円筒形で起こされたロニネの形にまで広がって、やがて冷却が始まる。
ソマはロニネを解くと、そこへわざと水の球体を浮かべて落とし、物凄い音で蒸発させた。
10の腕で身を守るテンギの様子を見て、ソマは大声で笑った。
「あっはっは、怖いのかしら?
全部あなたの武器じゃない?
・・・さあ、早く決断しなさい。
死にたいのなら、大地はあなたを助けたりしないでしょう。」
ぐったりと地面に伏して、テンギは身震いしていた。
ソマは地震を起こすのはやめて、そのままテンギを地縛するにとどめた。