The story of "LIFE"

第 10 章「無量義(むりょうぎ)」
第 03 節「帝都の暴政」

第 20 話
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敵と言えど、助かる生命は助けなければならない。

せっかく追い詰めていたものを。

元よりテンギが放った炎ではないか。
ヒユルが飲み込まれてしまえば、それに越したことはない。

そんな考えが僅(わず)かにあった。

ソマが駆け寄ると、ヒユルはヒステリックを起こして、総力で付近に水を撒いていた。

「助けてあげる。
抵抗はよしなさい。」
「ペッ。
この、豚女め!
早く解きやがれ!!」

パチンと、ソマはヒユルの頬を打った。
メラメラと燃える炎で、彼女の衣服や髪も焦げていた。

脚の力でバサッと飛び退(すさ)ったヒユルは、ソマから離れ、大声で叫んだ。
金切り声が耳に不快な響きを残す。

「今度会ったら覚えとけ!
ずったずたにしてやるからな!!」
「いいえ、逃がしはしない。」

走って行こうとするヒユルが、見えないバリアに当たって転倒した。

後ろから追いかけたソマが、手を引っ張って立たせる。

そこでガツン、と杖に突き飛ばされ、ヒユルは二重によろけた。
倒れたところを魔法が捉える。

「火はここまで来ないでしょう。
生命を奪うつもりも、あなたを逃がすつもりもないの。
ただ場所を移しただけ。」

魔力を吸い尽くされた体で、炎を避けるため、微々たる総力のパティモヌを使っていた。
ソマの重力はヒユルを再び地面に伏させている。
大地の力はもはやこの女を逃がさなかった。

振り返ると、アーダが飛び回って火を鎮めていたが、激しく打ち合うテンギとヱイユの勝負はつきそうもない。

『私一人でヒユルを捕縛したまま連れ帰るのは無理だわ。
馬車と数人の術士がいなければ・・・。』

ヒユルにヒーリングを与えれば魔力を取り戻してしまうだろう。
しかし魔法を発動できない程度に奪いながら、眠らせておくことはできないだろうか。

体温に心地よい熱と風を与え続けることにした。

『しばらくそこにいなさい・・・。』

初めて対テンギの戦場に立った。

「ソマ、大丈夫か?」
「ええ・・・。
でも、ううっ・・・。」

うぞうぞとくねる手足が、人間の体であるとは。

ソマは気分が悪くなって後方へ退いた。
大地からのヒーリングを再開させ、ヱイユにも与える。

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