The story of "LIFE"

第 10 章「無量義(むりょうぎ)」
第 03 節「帝都の暴政」

第 15 話
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千手の鬼神テンギがいよいよリザブーグへ向けて発つと知ったヱイユは、メレナティレ市街の警備機兵に上空からの爆撃を加えた後、一度ソマを森へ下ろしに行った。

「タフツァの一行がリザブーグに入った。
ファラとフィヲも呼応してくれている。
もし敵に遭ったら、時間を稼ぎながら戦っていてくれ。」
「自分の力量は分かっているつもりよ。
ヱイユくんが戻るまで、ここは誰も通しません。」
「無理に戦うと危険だ。
テンギ以外の相手に力を使うな。」

ふいに顔を背けて何も言わなくなったソマを、ヱイユは少し心配した。
優しく肩に触れながら彼女の名前を呼ぶ。

「あなたばっかり力をつけて、私は役に立たないみたいじゃない!」

こう言って彼の方へ寄り、胸を打つのである。

「ソマ、頼りにしている。
お前は実戦に臨んで、誰にもできない働きをしてくれる。
・・・戦いが終わったら、教壇に立つ姿も楽しみにしているよ。」

しかしソマは、ぷいっと、そっぽを向いて顔を合わせようとしない。

「未来に渡り、お前を必要としている人が大勢いることを忘れるな。
俺がお前を心配するのはそのためだ。
絶対に早まってはいけない。」

二人は、この世に生まれ巡り合った絆が、未来へつながるものであることを願い、強く抱きしめ合った。

離れ際、感傷的になっているソマの目を覚まさせるように、ヱイユは彼女の両肩を強く叩く。

それでもまだ情念が断ち切れないので、幼少時よくやったように、彼女の耳を引っ張り、わざとはっきり言った。

「さあ、ここは戦場だ!
気を抜けば敵に討たれるぞ!
・・・ほらっ、一撃、受けてみろ!!」

カーン!

ヱイユの剣と、魔法を込めたソマの杖がぶつかりあった。
もう寄り添うという選択肢は、彼女にも、自分にも与えない。

子供の頃、チャンバラ遊びをした後のように、力いっぱい弾き合って、腹の底から笑い、互いに拳を見せてその場を別れた。

一人になったソマは、周囲に何かいないか、警戒を強めていった。

兵士が来るか、機械兵に遭遇するか、あるいはレボーヌ=ソォラで多く目にしたような、何かの怪物が出るか。

しばらくの間、風が木々の葉を鳴らす音しか聞こえなかったが、ある時突然、異変に気が付いた。

「結界の、中にいる・・・!!」

女の甲高い笑い声が起こって、茂みの奥から艶やかな身なりに丈の短いローブを羽織ったヒユルが姿を現した。

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