第 10 章「無量義(むりょうぎ)」
第 03 節「帝都の暴政」
「なにっ、・・・橋を落す気か!?」
ここからインツァラを撃てば砲台を壊せるかもしれない。
しかし砲弾の火薬に引火して、砲手は巻き込まれてしまうだろう。
ヤエが駆け寄って来て耳打ちした。
「ピスムとワダイルが泳いで向こうへ渡っているところです。」
最も対岸近くまで攻め込んでいたタフツァは、バリアの半径を約3倍にまで拡大させた。
ヤエが中に入った。
そして彼は叫んだ。
「同じ人間、元同じ騎士団の同僚に向かって、お前たちはあの大砲を放つというのか!?
道を開けろ、邪魔する者は容赦しない・・・!!」
王国兵らをバリアで弾き、杖で薙ぎ払い、魔法で退けた。
バシャン、バシャンと、川へ落ちていく。
ドウン!
一基の砲口が開き、タフツァ目掛けて爆薬を含んだ鉄の弾が撃ち込まれる。
王国兵5名が無慙にも撃ち抜かれた。
「くそおおおっ・・・!!
味方を撃ったな、お前は許さない!!」
タフツァが橋の上を猛然と駆け抜ける。
ヤエも続く。
ワダイルが右の砲台を奪い取った。
岸へ到達しようとするピスムが、左の砲台から狙われていた。
「ピスム!
潜って!!」
ズドーン!
岸壁が打ち砕かれ、地面が爆発した。
中央の砲手にタフツァが飛びかかり薙ぎ倒すと、ヤエは左の砲手の手元を斬りつけて、砲台から離れさせた。
「大丈夫!?」
少し戻った所まで泳いで顔を出したピスムは無事である。
敵の大半が水に落ちている。
この時、橋の上で戦っているLIFE騎士はごくわずかになって、皆、落ちた王国兵らを助けに川へ飛び込んでいた。
「ナズテインさん!
救助に当たるメンバーを厚くして、入城するメンバーと分けてください。
攻め手が少数になって構いません。」
隊列が再編され始めた。
タフツァとウィロ、サウォーヌの5人、騎士団からはレンガーの第二部隊、マシンクの第五部隊、ハッボスの第十部隊までが先に旧王城へ攻め入る。