The story of "LIFE"

第 10 章「無量義(むりょうぎ)」
第 03 節「帝都の暴政」

第 09 話
前へ 戻る 次へ

手紙の内容を踏まえ、3人は地下室へ降り、夕食を兼ねて会議にした。

「わしはこの時のためにメレナティレで働いてきた。
たとえ技師仲間の反目に遭おうが、王国から生命を狙われることになろうが、構ったことではない。
集めた全ての機械兵を制御してみせる。
・・・だが、言うことを聞かなくなった本物の野良機体は操ることができない。」
「機械兵の武器は凍結できないでしょうか。
誤って発射することのないよう、お願いします。」
「うむ。
改修機体に装備させる武器の材料が調達できないとか理由をつけて、外して運ばせるとしよう。」
「その武器はどちらに?」
「工場だ。
そこへ壊れた機体を集め、直させる。
王国騎士たちも警備のために立たせる。」
「修理はすぐに終わってしまわないですか?」
「はっはっは、爆撃を受けているからな。
実際はもう使い物にならないぐらいさ。」
「トーハさん、機械の暴動が起きれば、最初にあなたの所へ助けを求めてきますよね。」
「時間とともに誤作動を起こさせる設定をした上で、気付かれないうちにLIFE騎士団と合流しようかの。
王城前で物理戦をさせ、できるだけ敵兵を引き出し、倒す。
後はきみたちを中に入れて、誰も城へ入れないよう封鎖させる。」
「分かりました。
十分な時間を取ってメレナティレから離れていてください。」

フィヲは黙って話を聞いていたが、どうにも不安が解消しないようで、口を開いた。

「お城の中にはあのテンギがいるんでしょ?
グルゴスっていう男も不気味だわ。
それにホッシュタスがいたら、わたしたち二人だけで戦えるかしら・・・。」
「テンギが単独で動くか分からないけど、奴はヱイユさんが引き受けてくれる。
決行はテンギが発って30分後としよう。」
「上手く占領できても、ロボットで外を塞いでも、きっと兵士が大勢、入ってくるわ。
建物がすっぽり入るくらいの、大きなバリアが必要にならない?」
「そうだね。
バリアで防いで、破られたら飛び出して戦おう。
城には原則、誰も立ち入らせない。
・・・最後は城ごと爆破するのがいい。」
「わたしたちの行き場がなくなってしまう。
町の人もみんな、敵になったら、もうどこへ逃げたらいいか・・・。」

確かに、全てを敵に回す場合、果たして脱出できるだろうか。

「メレナティレは放っておけば他国を侵略する国だ。
二人とも戦うことに自信を持て。
城を爆破する前に、住民を避難させるのがいい。
本当のことなのだから、きちんと誘導してやればついてくるだろう。」
「はい。
反対する者がいれば、どんなに強く言ってもいいでしょう。」

ファラの話し方を聞いていて、フィヲはセトの大軍と戦った時に、彼が大音声(おんじょう)を以って相手の非を示し、そこから総崩れに持ち込んでいったのを思い出した。

「だんだんイメージがわいてきた。
ファラくんの心積もりが分かったら、少し安心したわ。
わたしの動きも決まりそう。」

二人は目を合わせて微笑んだ。

朝早いからと、トーハが上に戻っていくと、二人は地下室で休まなければならなかったが、ファラはフィヲに「おやすみ」と言ったまま先に眠ったふりをして、実は長いこと眠れずにいた。

話した作戦の、更に先のことを考えていたのである。

フィヲはそれを知ってか知らずにか、ヱイユに頼まれた通りシェブロンに宛てた手紙を書き上げると、背中を向けて横になっているファラには近付き過ぎないようにして、静かに床に就いた。

前へ 戻る 次へ
(c)1999-2024 Katsumasa Kawada.
All Rights Reserved.