The story of "LIFE"

第 10 章「無量義(むりょうぎ)」
第 03 節「帝都の暴政」

第 07 話
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夕焼け空に照らされるメレナティレで、一人先にトーハの家へ帰宅したフィヲは、食事の準備を始めていた。
釜で米を炊き、鍋の水を火にかけながら、野菜を切っているところだった。

裏口の窓がトントンと鳴るので、彼女はそれが何の音であるか分かって微笑みながら、「ハイハイ」と返事をして開ける。

小竜リールだ。
鳩に化けている。

両手で優しく捕まえると、釜の近くに取っておいた小鉢の所へ連れていってやった。
首に結んできた布の包みを開く。

「いつも長い距離、大変でしょう。
ありがとう。
・・・ふふふっ、お米、鳥の姿のままお食べなさい。
竜に戻っても、お肉がないのよ。」

言われた通りに、鳥にしては多くの米粒を平らげてしまった。
そして美しい翼を持ったドラゴンの姿に戻る。
体は鳩よりも一回り大きい程度だ。

手紙はヱイユから。
字は決して上手くない。

『ファラ、フィヲ、いよいよ動き出すぞ。
メレナティレの混乱に乗じて、手薄になっているリザブーグへ、LIFE騎士団とタフツァ、それからレボーヌ=ソォラで味方になった5人の術士が一気に攻め入る。
敵対する人間を追放して、城下の一郭でも占拠できればと思っている。
当然、メレナティレが黙ってはいないだろう。
だが、無防備なオルブームへの侵略から目をそらさせ、王国内で決着してしまいたい。
テンギは今、メレナティレに入っている。
俺とソマが奴を引き受ける。
リザブーグへは入らせない。
・・・少し遅れて、ザンダが艦隊でルング=ダ=エフサを占領する。
先生をお助けし、島で応戦となるか、ミナリィへ打って出られるか。』

フィヲの心に、希望の光と、不安の闇が、同時に起こってきた。

『テンギの動きを俺が止めている間に、機械兵を使ってメレナティレ城を落としてほしい。
トーハさんの力を借りて、全ての機械兵を味方につけろ。
邪魔なら動かなくしておいても構わない。』

ぶるぶるっと、足元から震えが起こった。

そこへファラが帰ってきた。

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