The story of "LIFE"

第 10 章「無量義(むりょうぎ)」
第 03 節「帝都の暴政」

第 06 話
前へ 戻る 次へ

「知っていると思うが、ルング=ダ=エフサは天然の非魔法場。
古来、なぜ魔法が発動しないのか、解明されずにきた。
それを半年ほど前、シェブロン先生が手紙で教えてくださったんだ。
地上を取り巻くエネルギーが星へと還っていく地点らしい。
あの地では先生ですら、魔法をお使いになれない。
お前もロマアヤの皆も、メレナティレから誰か敵が上陸して来ても、双方魔法は使えない。
つまり、完全な物理戦となる。
・・・大変だと思うが、この前提で、人選を頼みたい。
先生をお連れしてルング=ダ=エフサを出、もし海上で戦闘にでもなれば、そこは魔法の応酬になることも忘れるな。」

ヱイユは話し終えると、居合わせた子供たちに笑顔を見せてすぐ行ってしまった。

ザンダはまずムゾール=ディフに相談した。

「おれも、どうしてもルング=ダ=エフサに行きたい。
現地で魔法は使えないけど、もしミナリィを攻めることになったら、魔法戦もできるメンバーが必要になる。
術士の人選はおれに任せてくれ。
ムゾールさんには兵を率いて、地上戦の総司令官になってもらいたいんだ。
たとえ相手が鬼神テンギであっても、一歩も譲らない布陣にしてほしい。」
「ロマアヤはシェブロン博士にお守りいただいたも同然です。
留守の間、復興と建国のことは信頼できる者に託して行きましょう。」

早速、ブイッド港からワイエン列島へ使者を送る。
旧メビカの首都ズマワービ、旧ウズダクの首都スタフィネル。

返書を受け取るまで、一週間を要した。

ロマアヤ上空はすっかり夏空になっている。
遠くの入道雲が、あらゆる生命の躍動を見守っていた。

それから3時間ほど要して、ヱイユは灰竜アーダの姿で、空路メレナティレとオルブームの間の海峡を確かめに行った。
竜王の勢力は今が最高潮であるに違いなかった。

とすると、ここからは次第に海流が弱まり、やがて侵略軍の渡航を許してしまうことになるだろう。

彼はゲルエンジ=ニルの生命に語りかけたが、返答はなかった。

『お前のことは忘れない。
この星の、また大宇宙の生命という、限りある時間の中に、お前は確かに生きた。
それも“LIFE”を守護するために、その尊い“生命”を使い切ってくれた。
本当にありがとう。
生から死へ、そして新たな生へ。
・・・またきっと会おう。
そして共に戦おう。』

傾きかけた陽が、水平線のかなたをわずかに赤く染め始める時刻になっていた。
その紅(くれない)が、彼には戦友ゲルエンジ=ニルの、ごつごつした体表の赤色に思え、胸を熱くした。

前へ 戻る 次へ
(c)1999-2024 Katsumasa Kawada.
All Rights Reserved.