The story of "LIFE"

第 10 章「無量義(むりょうぎ)」
第 03 節「帝都の暴政」

第 05 話
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ロマアヤの人々はザンダをゼオヌール11世として国の統治者に押し上げていた。
前公の意思を受け、王国に戻すことはせず、公国のままザンダも「大公」と呼ばれる。

お調子者の性格は、これだけ多くの人の善意や好意に包まれてみると、ごく慎重なものになっていた。

彼は勉強熱心で、同世代の子供たちを仮設のロマアヤ城へ呼び、共に学び合った。

「魔法を勉強する上で、常に念頭に置いておかなくちゃならないのが、“LIFE”なんだ。
元々魔法っていうのは、生命の一瞬の表れである“一念”に他ならない。
その“一念”が狂えば、魔法発動の目的まで狂っていってしまう。
だから魔法を学ぶってことは、正しい“一念”を発する、おれたちの“生命”を作っていくことなんだ。」
「ザンダくんって、すごい人なのね!
それ、誰に教わったの?」
「へへっ、シェブロン先生だよ。
世界中の人に、“LIFE”の大切さを教えてこられた方なんだ。」
「そんな人がいるなんて!
大人たちはみんな戦争のことばかり考えているのかと思ってた。」
「確かに世界はまだまだ自分の国のことしか考えていない指導者が多い。
旧セト国がその例だよ。
だけどシェブロン先生も期待されて、一番“LIFE”に近い国だって言われていたのが、このロマアヤなんだ。
おれたちは、ムゾールさんやルビレムさん、兵士のみんなに守ってもらったこの国の“LIFE”の心を、受け継いでいこうな。」

友達はみんな感動しながらザンダの話を聞いていた。
彼は、生まれてきてこんなに充実した幸せな日々が来るとは、過去には思ってもみなかった。

そんな折、兵士が勉強部屋の戸を叩いた。

「ザンダ様、ヱイユさんという方がお見えですが、ご存知ですか?」
「本当かい!?
シェブロン先生のお弟子さんだ。
おれが憧れてる人なんだ。」
「では、すぐにお通しします。」

ヱイユは子供たちのいる所へ通された。

「ザンダ、ロマアヤでの活躍、ファラから聞いたぞ。」
「みんなの力だよ。
おれ一人じゃ何もできないって、分かったんだ。」
「以前は俺の子供の頃と似ているように思ったものだが、表情といい働きといい、先生の弟子らしくなってきた。
タフツァにもファラにも似ていないが、お前はそれがいいんだ。」
「照れるなあ。
ヱイユさんみたいになりたいんだ、おれ。」
「いやいや、目指すべきは先生だぞ。
これはタフツァもファラも、ソマもフィヲも、みんなに言えること。
俺も及ばずながら先生を目指していくつもりだ。」

ザンダの学友たちは、ヱイユの闘神としての姿を見れば恐れを為しただろうが、弟弟子(おとうとでし)的な存在のザンダに対する話し方は至って優しかったので、頬を紅潮させて聞いていた。

「ところでザンダ、マーゼリアの情勢は聞いているか?」
「それが、国内とワイエン列島のことでいっぱいになってて・・・。」
「そうだろう。
本当はお前にはここに居て新しいロマアヤ建設の先頭に立ってもらいたい。
しかし事態がそれを許さなくなってしまった。」
「っていうと!?」
「リザブーグ王の弟が、兄を殺し、メレナティレに首都を移して専制を敷こうとしたんだが、つい先日、政変があって奴も殺されてしまった。
千手の鬼神テンギがグルゴスという男を連れ、メレナティレに入ったんだ。」
「テンギ!?
またクーデターか・・・。
リザブーグ王国は海を隔てた隣国。
おれたちに何かできることがあれば加勢しますよ。」
「今日はそのことで頼みがあってきた。
シェブロン先生がおられるのは、ここからすぐ東の孤島ルング=ダ=エフサ。
もし艦隊を動かせるなら、メレナティレが動く前に、先生をお助けし、島を占領してくれないか?」

ザンダの目が輝いた。
彼は立ち上がってヱイユの手を取り、「きっとそうしてみせます」と誓った。

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