第 10 章「無量義(むりょうぎ)」
第 03 節「帝都の暴政」
テンギとグルゴスの入城で、メレナティレは混乱に陥った。
町周辺の警備を強化するため、広大な国土の各所に配置されていたロボットはメレナティレ周辺に集められていた。
国民の間には、先日の夜の爆撃はテンギらの仕業なのではないかと疑念が浮かび上がり、王城と城下とは微妙な対立関係を深めていく。
ファラはトーハの孫ということにして、機材を運ぶのを手伝ったり、鍛えられた肉体を見込まれて騎士のかわりに警備に立つなど、王国内の事情を少しずつ把握していった。
フィヲもまたトーハの孫娘と近所へ紹介されていた。
二人は若い夫婦であり、どちらがトーハの実孫かということは本人の口からは語られなかった。
「リザブーグで暮らしていたんですって?」
「ええ。
彼が祖父の仕事を手伝うために、しばらく滞在する予定なんです。」
彼女は努めて商店などと顔見知りになっていき、情報収集にあたった。
また小竜リールが鳥に変化してトーハの家に来ると、手紙を受け取り、返事を書いて託すという、通信の役目を引き受けた。
一方、コダーヴ市では、古都アミュ=ロヴァから到着したタフツァと少年ウィロ、そしてヤエら5名と合流したLIFE騎士団が、またとない好機に、リザブーグ城へ向けて出発しようとしていた。
途中、大型の機体が残留している地点では、タフツァが先頭に立ち、全軍を守護しながら戦い進んだ。
ソマといったん別れたヱイユは、ファラに頼まれていたことがあって、フスカ港へ立ち寄っていた。
そこでファラとフィヲを乗せて来た船長に手紙を渡す。
『無事メレナティレへ潜入し、内外の味方と呼応して、大陸規模、世界規模の戦いを開始するところです。
旧リザブーグの国土が戦場となるでしょう。
そこでお願いがあります。
ロマアヤの旗を高く掲げ、王国港ミナリィを挑発し、敵の攻撃を受けないよう、東へ東へ帰国していていただけないでしょうか。
ミナリィからは西へ進んだ方が早く帰れると思いますが、大きな作戦の一環として、どうか引き受けてください・・・。』
一読すると、船長はヱイユに頷いた。
「大役に感謝する。
ミナリィ周辺は混乱していて、外国の船を攻撃する余力はないはずだ。
それでも気をつけてくれ。
ファラはロマアヤの旗をと言っているが、最初はミルゼオの旗で接近し、安全を確保した所で、注意を引くようにしてロマアヤの旗を出すのが効果的だと思う。」
「分かりました。
ファラ殿とフィヲさんに、どうかご無事でとお伝えください。」
彼には一刻の猶予もなかった。
大急ぎで旧セト国へ行き、ルアーズやサザナイア、アンバスと会った。
皆、一様に驚き、ヱイユを迎え入れた。
「建国の進み具合はどうだ?」
「旧セト軍の上層部は牢に入れてあります。
彼らの改心と、国民の許しがあれば市民として職を与えましょう。」
簡単な状況説明を受けた後、彼から言うまでもなくルアーズが聞いてきた。
「リザブーグは、大変なのですか?」
「ああ、重大な局面を迎えている。
これからザンダに会って、海軍を動かす。
シェブロン先生が囚われている孤島ルング=ダ=エフサへ上陸し、一時ロマアヤに占領してもらうつもりだ。」
「一気に攻勢をかけていくわけですね。
リザブーグへ渡り、お手伝いできることがあれば何でもやりたいと思いますが。」
「助かるよ。
3人とも、動けるのか?」
「もうすぐルビレムさんがこのシャムヒィへ入ってくださる予定です。
以後、わたしたちもブイッド港からフスカへ、リザブーグへ向かうようにします。」