第 10 章「無量義(むりょうぎ)」
第 02 節「悪王と邪師」
ソマはヱイユと共に戦うことになった。
ヱイユが各地の仲間たちをつないだ後、テンギに集中できるまで、彼女はアミュ=ロヴァで待つ。
「カコラシューユ=ニサーヤは俺と刺し違えて生命活動を終えている。
しかしヒユルがそれをどう譲り受けているか。
以前なら魔法を使えなかったあの女が、ニサーヤほどの力で魔法を撃ってくることが考えられる。
それから全身に隠し持った凶器の攻撃を見切っていかなければならない。
ソマ、もう一度全ての魔法書を読んで、使えるものは全部身につけておいてほしい。」
タフツァは一日も早く師を守らなければと焦りを感じていた。
「シェブロン先生の身柄はメレナティレの意のままだ。
レボーヌ=ソォラとイデーリアの問題が片付いた今、これ以上先生を、最も“LIFE”を憎む人々の手に委ねておくことは絶対に許されない。」
「俺とソマが子供の頃、先生を陥れようとした悪逆の術士『ヨムニフ』が、他人の肉体を乗っ取り、今カザロワの側近になっている。
あいつのメレナティレ入りの狙いはシェブロン先生だろう。
ご帰還は弟子の手で行う。
敵を先んじていくんだ。」
「『ヨムニフ』・・・!!
ここでは『ケプカス』と名乗っていた男だ。
機械半分・生体半分の、ボロボロの肢体で姿を消した後、誰もが死んだと思っていたが・・・。
みすみす取り逃がしてしまったとは!」
ソマが、自責の念に駆られるタフツァを落ち着かせるように言った。
「小舟でルング=ダ=エフサに近付いて、安全な場所へお連れできないかしら?」
しばらく沈黙が続く。
ヤエが口を開いた。
「ザンダさんたちは海民であるメビカ船団とウズダク海軍を味方にされたのですよね?
イデーリア大陸から王国港ミナリィへ行くなら、東回りで向ってもらい、上手くすればルング=ダ=エフサを占領できるのでは?」
皆が顔を上げ、明るい表情になった。
小竜リールを使ってザンダに手紙を届けるのがいい。
「すごい、ヤエさん、名案よ!
世界地図がよく頭に入っているわ。」
これまで世界を飛び回ってきたヱイユは、ヤエに言われるまで気付かなかったことを恥じつつ、失敗の許されない作戦となるので慎重にあたらなければと心に期す。
「ミナリィ港にはイデーリアの強敵がいる。
東から攻める前に、西からミナリィを引き付けてもらうようにしよう。
先生をお連れするには、相手の不意を突かなければなるまい。」
タフツァも頷いて答える。
「王国との戦いは、各地から集い来る弟子の総攻撃としていこう。
僕とウィロはLIFE騎士団の盾になるよ。」
ヱイユにとって、また騎士団の皆にとって、タフツァが機械兵の銃撃や砲撃を防いでくれるならば、これほど心強いことはない。
ウィロの瞳が輝いた。
「コダーヴ市へ、馬車を飛ばして向かいます。
ぼくも『ロニネ』を勉強したかったんです。」
二人の動きに、ヤエと探偵組織サウォーヌのメンバーもひとまず加わってくれることになった。
この上ない布陣である。
ファラとフィヲには、総攻撃の際にメレナティレ市民を守りながら戦ってもらうのがいいだろう。