The story of "LIFE"

第 10 章「無量義(むりょうぎ)」
第 02 節「悪王と邪師」

第 17 話
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皆のいる所でこんなふうにするのは、異性としての感情からではないのだろう。
同じ道に生きる同志として、戦友として、再会を喜んでいた。

ヱイユはそれを照れもしたし、うれしく思う反面、さびしくも感じた。
彼女の肩をたたきながら声をかける。

「・・・ソマ、ここからが真価を問われる戦いだぞ。
気を緩めるな。」
「レボーヌ=ソォラを守ってくれてありがとう。
ケガ、何もしてあげられなくてごめんね。」

ウィロは顔を赤らめ、ヤエも直視できず、タフツァは二人がこうして会えたことを喜びつつ、やはりソマにはヱイユへの情愛と恋慕があるように思われて、自身の心が切なく痛むのをどうにもできなかった。

ヱイユはソマのためにイスを引いてやり、腰掛けさせると、タフツァとの間にウィロをはさんで自分も座る。

「まずは敵の動きから。
・・・悪魔カコラシューユ=ニサーヤは生きている。
そしておそらく、ヒユルと共にいる。」
「そんなっ!
じゃあ、フィフノスは!?」
「また行方不明だ。
追跡したものか、放っておいたものか・・・。
俺は奴が姿を現してからでも遅くはないと思っている。」

実に難しい問題だ。
話し合った末、フィフノスに関しては、レボーヌ=ソォラ中に指名手配犯という形で周知し、元内衛士団の団員から人選して捜査にあたらせることにした。
モアブルグ巡査隊の協力も得られよう。

「国内はそれでいいな。
あと、ヒユルについてだが・・・。」
「わたし、できることならこのアミュ=ロヴァにずっといたい。
けど、今戦わなかったら永久に後悔すると思うわ。
だからヒユルの追跡を、私に任せてもらえないかしら。」

彼女にしては積極的だ。
この娘には、以前なら人任せなところが多分にあった。

「ソマ、お前たしか、『平和な時代に生まれたら教師になりたい』って言ってたな。
せっかく夢が叶いそうなのに、ここを離れていいのか?」
「確かにレボーヌ=ソォラには“LIFE”の時代が訪れようとしている。
でも、だからこそ、この国は他国にも分かるように“LIFE”がどれほど大切か、伝えていくべき責任がある。」

ソマが学校の先生になりたかったというのは、タフツァもヤエも知らなかった。
それを聞いただけに、彼女の決意が悲壮なものに思われてきた。

「メレナティレやリザブーグでは、敵は多く、味方は少ない。
お前が戦力として加わってくれることはとてもありがたい。
ただ一つ問題なのは・・・、ヒユルは女性と非魔法使いには関心を示さないらしいんだ・・・。」
「えっ!?
それは・・・。」
「ヒユルは好色であることが知られています。
それも、気に入った男性の前でしか、本気を出しません。」

これもまた難問である。
絶大な力を持つ敵を、捕縛するには戦わなければならず、戦うといって相手にされないのであれば、ただ野放しにすることになる。

「ヤエさんがヒユルの性行(性質と行動)を知っているのは分かるけど、どうしてヱイユ君は気付いたの?」

さすがの闘神も狼狽を隠せない。
ヒユルはヱイユと出会って以来、実に彼だけを標的としているらしいのだ。

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