The story of "LIFE"

第 10 章「無量義(むりょうぎ)」
第 02 節「悪王と邪師」

第 10 話
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「一度、工場に戻した方がいい。
生産はこいつらの修理が済むまで停止だな。
それから、こんな物騒なことが起きるんじゃあ、警備に当てる騎士の数を増やさなければならん。
昼夜交代で立たせてもらえないか。」
「もちろんだ。
しかし困ったことがある。
明日までにオルブームへ送り出す機械兵が、これと同数だけ要るんだ。」
「ふむ、周辺の森を徘徊させている機械を集めるのがいい。
急ぐならそれ以外見当たらない。」
「国境と国内の防衛はどうする?」
「機体の数はそうすぐに増やせるものじゃない。
北伐を取るか防衛を取るか、二つに一つとなるだろう。
それを決めるのはわしらではなく国王だ。」
「分かった。
壊れた機械は城下とリザブーグへ運ばせよう。
工場ごとに技師を割り振って、リザブーグが足りなければ回してくれ。」

トーハにとって一世一代の大芝居である。
周辺の森から機械兵を撤退させ、新たな生産もストップさせる。
工場ごとに王国騎士を分散させ、王城周辺の警備を手薄にする。

あとは物資の不足を口実に、兵器の修理と言いながらも、戦闘力の低いロボットへ作り変えてしまえば申し分(ぶん)のない作戦といえる。


メレナティレが壊れたロボットの搬送に動き始めた頃、ヱイユはコダーヴ市南方のLIFE騎士団キャンプに到達していた。

彼はキャンプの中へは降りず、付近の森から歩いて入っていった。

「おお、これはヱイユ殿!!
ご無事でしたか・・・。」

槍を持って立っていたのはマシンクだ。
ヱイユが悪魔カコラシューユ=ニサーヤとの死闘の末、深手を負ったことは皆、聞き知っている。

「おかげさまで、もうすっかりいい。
・・・さて、取り急ぎ、ナズテインかスヰフォス殿に会いたいのだが。」

LIFE騎士団は目下、メレナティレよりもリザブーグへの潜入または急襲を視野に、交代で休み、キャンプを守り、情報の収集にあたっていた。

しかしそう簡単にリザブーグへ入り込めるものではない。
来る日も来る日も徘徊ロボット兵との戦闘に明け暮れ、収穫はなく、食糧の調達に苦心していたのだ。

スヰフォスは悩み抜いていたが、決して諦めてはいなかった。

彼のテントにヱイユが姿を見せるや、驚く以上に喜びの声を上げた。

「ヱイユ殿ではないか!」
「レボーヌ=ソォラでは本当に助かった。
途中で戦線離脱してしまってな。」
「それにしても回復が早い。
ヤコハ=ディ=サホへ行かれたというが。」
「ああ、『長老の木』で10日ほど眠り続けていたんだ。
天然のヒーリングで傷はほぼ癒えた。」

そこへ、マシンクの知らせを受けて、外からナズテインが帰ってきた。

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