The story of "LIFE"

第 10 章「無量義(むりょうぎ)」
第 02 節「悪王と邪師」

第 07 話
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ファラはフィヲに打ち明けた。

「ヱイユさんに“フィナモ”のことを話したら、笑って励ましてくれた。
ぼくにも“LIFE”が実現できるって、信じてくれた。
だからぼくもあきらめずに行くことにしたんだ。」
「そうよ、それに、テンギの体からファラくんの“フィナモ”が・・・。」
「うん、あいつの体内に組み込まれているんだね。
ぼくにはテンギを止めることができるかもしれない。」

それから彼は、トーハの机の上に積んであった反古(ほご)紙を一枚取り、サラサラと魔法文字を書き連ねていった。

「正方向へ、“フィナモ(炎)”の内側に“インツァラ(爆発)”、“テダン(雷)”の内側に“トゥウィフ(衝)”、“クネネフ(風)”の内側に“メゼアラム(喚)”、“ザイア(氷)”の内側に“ドファー(変)”、“パティモヌ(水)”の内側に“テティムル(吸)”、“ググ(磁)”の内側に“ゾー(重力)”、“ドゥレタ(土)”の内側に“ロニネ(壁)”、“ズーダ(熱)”の内側に“グルガ(滅)”を配置する。
そして中央に何かの文字を置きたいんだ。
きみの名前である“フィヲ(結)”、または“ファイエ(増)”か、“アズィム(複)”か・・・。」

フィヲはその画竜点睛を欠くだけの魔法陣を見て、得意そうに、嬉しそうに、言いたくて仕方のない様子になって答えた。

「どれもだめよ。
ファラくんならその3つの制御文字が、魔法陣をどう作用させるか想像したはず。
ふふふっ、見て、この文字を知っているかしら・・・?」

彼女はファラのペンを取って、彼が描いた魔法陣の中央に、ある文字を書き込んだ。

それは左右対称形の文字で、横長の菱形を、縦に小、大と連ねた形をしており、上から下まで縦一本の線を走らせていた。

「ずっと、わたしの頭の中にあった文字。
レボーヌ=ソォラで、“LIFE”の文献をみんなで探している時に見つけたの。
『ゼエウ』って読むのよ・・・!!」

「『ゼエウ』・・・!!
すごい、これだ、・・・ええと、意味は、・・・有でなく無でなく・・・!!」
「そう!
『空(くう)』を表す文字。
全ての魔法の力を、発現しないけれど、発動させるというか・・・。」
「これなら殺傷力はない。
それでいて森羅万象を、“大宇宙”と“小宇宙”の力を、一瞬の自身の“生命”の上に浮かべることができる・・・!!」

「わあ!!」と、二人は手を取り合って喜んだ。
我を忘れ、時間も場所も忘れてはしゃいでいたが、ふと、あまり大きな声を出してはならないことに気が付いた。

黙り込んでからも、胸の奥に溢れ出す感動を抑えることができない。

「フィヲ、本当にありがとう。
“究極魔法陣”はこれで完成だ。
あとは実戦の中で立ち上げて、“キュキュラ(総力)”で撃てればいい。」
「わたし、これを見て思うの。
いつか大事な局面を迎えて、その時、一生に一度だけ撃てば“LIFE”になるのでは、ないんじゃないかって。
きっと、瞬間瞬間、この形に表したわたしたちの思いを、凝縮して相手にぶつけていくんだわ。
剣の一太刀一太刀、杖の一振り一振りに、一回一回の魔法発動の時に、シェブロン先生がみんなに伝えようとされている思いを、“宇宙”と“生命”の願いを、ストレートにぶつけて、どんな時でも戦い続けて、勝ち続けていくこと。
それが“LIFE”なんじゃないかって。」

ファラは甚(いた)く胸を打たれた。
しばらく呆然とフィヲの言葉を繰り返した。

そして彼女が導き出してくれた結論は、彼の結論となっていったのである。

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