The story of "LIFE"

第 10 章「無量義(むりょうぎ)」
第 02 節「悪王と邪師」

第 05 話
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送風機が回っている。
トーハは二人のために米飯と瓜類の漬物、冷えた茶を出してくれた。
それぞれ持って小さな食卓に運ぶ。

トーハ自身は熱い茶を入れてきた。

「他国はどうだったね。」

あまり大きな声では話せない。
寝静まった時刻の声は近隣によく聞こえる。
周囲は彼に味方してくれる技師の家ばかりだが、敵はどこに潜んでいるか分からないのだ。

「盗聴」という技術も、ここメレナティレでは発達していた。

それに、先の爆発が他国からの攻撃であることはすぐ想像される所でもある。

囁くような小声を約し合って続けた。

「レボーヌ=ソォラは大変でした。
現地の軍隊が黒いローブの術士たちを憎むあまり、過激な作戦を実行しようとしていました。
それでタフツァさんは、連戦して疲れていたのに、一人でテビマワへ止めに行ったんです・・・。」
「無茶なことを。
だか彼ならそうするだろう。
博士は彼の性格を知っているからこそ、予断を許さない状況下のあの国へ遣わされた。
その性格というのも、実は博士にそっくりなのだよ。」
「はい・・・。
それで、テビマワへはヱイユさんも駆けつけてくれましたが、互いに憎しみ合い殺し合う人たちの間に挟まれ、タフツァさんがかなりの負傷をして帰ってきました。」
「ううむ、酷なことだ・・・。
その後、皆はどこへ?」

フィヲは、モアブルグで戦士ゴーツが追っ手の接近を知らせて逃がしてくれたこと、ルモア港の手前で捕まり、タフツァと、彼をかばったソマがアミュ=ロヴァへ連行されたこと、までを話すと、当時のこわかった気持ちを思い出し、胸が詰まって続けられなくなってしまった。

代わりにファラが話し出す。

「シェブロン先生とノイさんが育てられた『LIFE騎士団』が、古都アミュ=ロヴァに到着しました。
彼らの活躍により、悪魔結社マーラの脅威は除かれ、自由の身になったソマさん、現地に入られていたヱイユさん、そしてタフツァさんがアミュ=ロヴァ市民らとともにテビマワの術士たちを捕縛しました。
・・・ぼくが知っているのはここまでですが、すでに騎士団が南下してコダーヴ市の辺りまで来ているそうです。」

夜が更けていく。
時間を割いてでもトーハには話しておかなければならなかった。

ロマアヤでのいきさつ、ザンダと旧王族の出会い、ルアーズたちの協力。

一通り語り終えた時、トーハの目にも、北から東からシェブロンの教え子たちが無数の味方を引き連れて集い来ており、メレナティレに対して博士の帰還を、まさに迫らんとしている光景が浮かんできた。

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