第 10 章「無量義(むりょうぎ)」
第 01 節「魔都集結」
「イデーリアの内戦が終わった翌日、ロマアヤ、メビカ、ウズダクの主要な人々が、戦死者を出してしまった唯一の戦場であるシャムヒィ南郊へ、弔(とむら)いに出ていたんです。
ブイッド港に残ったぼくはホッシュタスに“フィナモ”を奪われて体力が戻っておらず、加勢してくれたザンダは消耗し尽くしていました。
・・・そんな時、突然メレナティレ船が入港したと、騒ぎが起きたんです。」
メレナティレ王カザロワは、膝下の新港から航海の利便性をよくするため、隣国ミルゼオに、国土を横断する「運河」を開通せよと迫っていた。
これによって両国の関係は悪化したが、依然として東方への渡航にはマーゼリア大陸南岸の「ミナリィ港」が使われている。
「メレナティレ兵たちの狙いは始めから決まっていたようで、ホッシュタスと、封じられたテンギの身柄を確保することでした。
彼らは手薄な警備を突破し、二人を船に乗せました。
なんとか駆けつけて、船上で交戦し、追い詰めましたが、メレナティレ船が動き出して・・・。」
「別の船で追いかけてきたわけか・・・。」
「はい、全てザンダが手配してくれました。
船長が夜通し運行してくれたおかげで、彼らより早くここへ着いたと思うのですが。」
「むこうもそろそろ着いているだろうな。
お前はどうするつもりだ?」
「どこから行っても国境は通してもらえないと分かりました。
ミルゼオの貿易船にでも潜り込んで・・・。」
「いや、どうせいつかバレるなら、始めから危険を押し通った方がいいかもしれない。
問題は、どこへ降りるかだな・・・。」
ヱイユはしばらく考えた。
「空路、メレナティレに入って、現地を押さえられるか?
フィヲと二人で、どうだ。
LIFE騎士団にはリザブーグを攻めてもらう。」
ファラは呆気に取られた。
「俺がミナリィに降りてテンギを引き受けよう。
これで全部、止められるんじゃないか?」
機械兵との戦闘には経験がある。
敵が王国騎士だったとしても、ファラには得意な相手だ。
フィヲは周囲が心配するほど弱くない。
むしろ、ファラとともに戦う場合、ほとんど無敵と言ってよかった。
「タフツァとソマにも動いてもらわなくては。
明日の昼まで、ここで待機していてくれ。
戦い方をよくフィヲと話し合っておくこと。」
ここまで話すとヱイユは立ち上がり、ファラを振り返って笑みを見せ、すぐに飛び立っていってしまった。