The story of "LIFE"

第 10 章「無量義(むりょうぎ)」
第 01 節「魔都集結」

第 15 話
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ヱイユも腰を下ろした。
東の空に赤く欠けた月が出て、西の方を照らしている・・・。

「王都がメレナティレに移ってから、リザブーグは権力の魔の手から一時解放されたかに見えた。
お前も滞在していた、あの城下には、LIFE騎士団の予備軍として50人は残っていたはずだ。」
「そうでした、彼らは、どうなったんですか・・・!!」
「俺もレボーヌ=ソォラを離れられなかったもので、悪いことをしたと思うが、・・・リザブーグのLIFE騎士団は壊滅状態だ。
皆、圧力に負けてしまった。」
「王国騎士に戻ったということですか?」
「ああ。
始めは隠れてシェブロン先生やノイさんを助けていた者も、再び国家の支配が強まる中で、国王カザロワに従うほか生きる道がなくなったともいえる。」

ファラはしばらく黙って考えていたが、ヱイユの顔を見て言った。

「もう一度、リザブーグに騎士団を作りましょう。」
「待て待て。
心を翻した者が、そう簡単に戻って来ることはない。
お前はお前の信条のまま生き抜いて、敵味方、誰に対しても示しきっていけばいい。」

暑い夏が近いというのに、海からの風はひんやりと額を掠めていった。

「スヰフォス先生たちは、コダーヴ市に足止めされて?」
「現状、陸路から国境を越えることはできない。
機械兵を従えた王国騎士たちに阻まれるだろう。
・・・そうだ、それより、お前、魔法はどうした!?」

打ち明ける前に気付いてくれるのはシェブロン博士の教え子だけである。
ファラは不安そうに、それでも微笑して答えた。

「“フィナモ”が、敵の術士に奪われて、・・・撃てなくなりました。」

この少年にいつも満ち満ちていた“希望”が、翳りを見せていた。
ヱイユは別に驚きもせず、ファラの背中をポンと叩いて、声を励まして言った。

「心配するな。
現象として発動できなくなっているだけで、お前の“生命”にはちゃんと、元通り“フィナモ”が灯っているじゃないか。
仮に魔法が撃てなくても、俺はお前が“LIFE”を必ず実現すると信じてるぜ。」

じわりと涙が溢れてくる。
幼少の頃すでに知り合っていた魂の温かさ、懐かしさ。

ファラが声を出して泣くので、ヱイユは彼らしくもなく、自分の胸元へ顔を押し当ててやった。

「はっはっは、どんなに邪悪な術士といえども、俺たちの“LIFE”を破壊することなどできはしない。
自信を持て、お前には剣があるじゃないか。」

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