第 10 章「無量義(むりょうぎ)」
第 01 節「魔都集結」
『今朝の夢で、久しぶりにムヂ先生のお顔を思い出した。
伝承を探し歩いて、力のある魔獣を捕らえておくのもいいか・・・。』
“LIFE”の発動にはまだ自信が持てない。
全ての魔法を修得した時、彼なりに究極魔法陣のイメージを浮かべてみたのであるが。
火・風・水・土の四属性と、電・冷・磁・熱の亜四属性を関連させて配置することで、「正八角形」を描き出す。
隣り合う熱・火・電から爆を、火・電・風から衝を、電・風・冷から喚を、風・冷・水から変を、冷・水・磁から吸を、水・磁・土から重を、磁・土・熱から壁を、土・熱・火から滅を、それぞれ導き出す。
そして彼は中央に配する文字について、結合を表す「フィヲ」を置くべきか、増幅を表す「ファイエ」を置くべきか、あるいは同時発動を表す「アズィム」を置くべきか、まだ決めかねているのだ。
最も有力なのは「フィヲ」の文字で、16種類の全魔法を合体させて放つことになる。
しかしその場合、死滅を表す「グルガ」が入っていることから、相手の生命活動の終焉、すなわち「死」を現じてしまうのではないか。
隣り合う文字どうし、威力を増幅させ合う「ファイエ」の文字は、前述の隣り合う熱・火・電と爆などの間であれば有効となろう。
だが全部の魔法を、相互に増幅させるように用いた場合、対属性どうしが相殺し合ってしまうのだ。
では、「アズィム」ならどうか。
それは16の魔法を同時に撃つことを意味した。
異常に殺傷力の高い、しかも熱さ寒さ、磁界によって強められる電撃、ありとあらゆる苦しみを相手に与えるだけの、まさに「地獄」を現出する発動となることは想像に難くない。
ファラが時間の経つのも忘れて思い悩んでいるところへ、突然、石畳を叩く靴音が聞こえた。
海へ向かって広がる暗がりの中に人影が見えてくると、宿の明かりで照らされた顔が笑った。
それはヱイユだった。
「よう、何か困りごとでもあるのか。」
「あっ、ヱイユさん・・・!!」
闘神ヱイユは、以前なら防具の類を身につけていなかったが、袖の短いコートの上から様々なプロテクターを装着して現れた。
「レボーヌ=ソォラは、どうなりました!?」
「ははは、平定した。
俺一人の力じゃないさ。
じきにタフツァもソマも、下ってくるだろう。
騎士団から犠牲は出していない。」
「よかった!
スヰフォス先生から手紙をいただいたんです。
今、どこにいるか分かりますか?」
「ビオムの南西でキャンプしている。
交代の見張りを立てて、何度か交戦もしたようだ。」
「メレナティレですね・・・!」
「ああ、リザブーグ周辺はかなり大変なことになっているぞ。」