第 10 章「無量義(むりょうぎ)」
第 01 節「魔都集結」
夕飯の時間になった。
男たちは陽気に騒ぎながら階段を下りていく。
一人遅れてファラの後ろを歩く兵士がいた。
「あなたは、確か、リダルオで・・・。」
「はい。
水夫たちはここに滞在する予定ですが、わたしはファラ殿にお供させていただきたいのです。」
「それは助かります。
ぼくたちの仲間にLIFE騎士団があるのですが、あなたも加わるといいでしょう。」
兵士の名前はラムフォングという。
ここへ来なければ無名のまま、ロマアヤ再建の担い手の一人となっていただろう。
決して有名になることが幸運ではない。
しかし人にはそれぞれ、果たすべき役割、何に生き、何に死んでいくかという、“使命”がある。
ラムフォングは並み居る兵士の中からザンダに抜擢されて船に乗った。
旧セト国領内での戦死者追悼の儀にザンダが行かず港にいたのも、前日の深夜に及んだ戦闘で、著しく消耗したためである。
船乗りたちは皆食堂へ入ったが、ゆっくりと歩く二人は話し続けていた。
「侵略との戦いにあって、勇敢に剣を取った人も、イデーリアの統一が成れば、そのほとんどが武器を置き、本来の職に戻っていくはずです。
あなたはこれからも戦士として生きますか?」
年齢は兵士の方が5歳ほど上だった。
「そのつもりです。
わたしは故国の戦乱を通して、世界中の戦火に苦しむ民衆を解放するその日まで、戦い続けなければならないと、心に決めました。
どうかわたしに訓練を与えてください。」
ファラは恐縮したが、彼を見ていると、LIFE騎士たちと交わるうちには、目を見張るほどの進歩が現れてくるに違いないと感じた。
一兵卒として地味な戦いを繰り返す中で、他の誰とも似ていない、この男特有の身のこなしが光っていたのだ。
多数対多数の会戦では、ひたすらぶつかり合って削り合い、どちらかが壊滅した後、残った方が勝者と思われがちである。
だがファラのLIFE戦術は、自国から犠牲者を出さないだけでなく、相手にも生命に及ぶような危害は加えない。
自ら先頭に立ち、敵軍の只中へ斬り込んでは、後続の軍に道を開いた。
いわばロマアヤ全軍の、攻守一体型主砲だったと言える。
そのファラが彼を見て感心したのは、ラムフォング自身は奇抜な動きで戦いの筋道を作る役割に徹し、仲間たちが最大限に力を発揮できるよう、まるで敵味方を操縦しているかのように振る舞っていたことだった。