第 10 章「無量義(むりょうぎ)」
第 01 節「魔都集結」
出港間際、ロマアヤ兵から手渡されたザンダの手紙は「親愛なるLIFEのみんな」となっていた。
ファラは、ここにいる全員に宛てたものだと言って封を切った。
声を出して読んで聞かせる。
『おれはここに来るまで、シェブロン先生やタフツァさん、おねえちゃんにも守ってもらうばかりで、体を張ってみんなを守るってことがどれくらい大変か、全然分からなかった。
それが、ゼオヌール公が父さんだって言われて、みんながおれを待っててくれて、頼ってくれたことで、絶対にロマアヤを守らなくちゃって、先頭に立って戦えるようになったんだ。
前まで自分の力がどれくらいか知りたくて使うだけだった魔法も、一回一回が、誰かを守るための発動に変わっていった。
インツァラとゾー、それにちょっとのフィナモだけじゃあ、全然足りなくなった。
だから勉強もするようになったよ。
どうして体を張ってまで人の生命を守るのか、温室の中にいたんじゃ分からなかった。
先生が戦いの中で学べるようにって、機会を、訓練を与えてくれたんだ。
おれが生まれるずっと前から、先生はロマアヤの将来を考えていてくれたこと、初めて肌で感じたよ。
おれが判断を誤れば、みんなに人殺しを許してしまいかねない、戦場という極限状態で、相手の生命をも守り抜くことの大切さを、みんなから教えてもらった。
ファラくんに生かされたセト兵が次の戦いからは味方になり、国を超えてイデーリアのために手を取り合えた感動は、これから先もずっと忘れない。
おれの中に“LIFE”が息づいた、かけがえのない日々。
必ず、“LIFE”による模範の建国をやってみせる。
そして、一番大事なことを学ぶために、おれはみんなをつれてリザブーグへ、メレナティレへ行くからね、しばらくの間、頼んだよ。』
署名は「みんなの弟 ザンダ」となっていた。
皆、涙を流した。
ファラも何度か声を詰まらせたが、力を込めて言った。
「ザンダは何度も、ぼくが絶体絶命の所を助けてくれたんだ。
・・・ロマアヤがどこまでも“尊厳”を信じて戦ったからこそ勝ち得たみんなの今がある。
イデーリアから大切な仲間たちが来た時に、危険な道を通らせはしない。
どうかくれぐれも王国兵とは接触しないよう、気を付けて過ごしてください。」
港町フスカで一番目立つ建物。
それはLIFEの一行が宿泊した「三階建ての宿」だ。
波に揺られ、高く昇り詰めた真昼の太陽に照らされて、夜を徹した強行の船旅はようやく、決戦の地へと続く埠頭(ふとう)に辿り着いた。