第 10 章「無量義(むりょうぎ)」
第 01 節「魔都集結」
スヰフォス学師の家は小さくて、雨の日は教え子たちが訪ねて来なかった。
それでも彼は方々に出掛けていく。
ファラは紙に鉛筆で円を描いたり、文字を置いたりしながら、「ロニネの本」を読み進めていった。
周囲に魔法使いがいないため、誰か教えてくれるのでもなく、自分で学習しなければならなかった。
本を読むこと自体、初めてのことなのだ。
1ページ進むのに1時間もかかることがたびたびあった。
ある日、帰宅したスヰフォスは、ファラが遅くまで勉強していることを褒めた後、厚い本を手渡してくれた。
宇宙と世界、人間と生命について、万般の知識が集約された「百科辞典」だった。
「これからは魔法や学問の資質を持った子も、ここで才能を開いていけるようにと思ってな。
いつでも使っていい。
終わったら元の場所に戻しておくんだよ。」
分からない言葉を一つ一つ、調べながら読むことで、ファラの読解力はぐんと上がっていった。
3ヶ月かかってようやく読了したが、まだ攻撃を防げるほどのバリアはできない。
何度も、何度も目次を引いては、理解の浅い部分を補った。
入れ替わり立ち代わり、多くの戦士と演習する日々が続く。
ようやく、模擬戦で手の平ほどのバリアを起こし、斬撃を受け止めたり、打撃を弾き返したりできてきた。
そこからは魔力の強化とともに、「集中力」を高める修行に入った。
「ぼくの名前の由来、『フアラ』は、『一点集中』という意味なのか・・・。
魔法陣の中で効果的に使えたら、少ない消費で強いバリアが起こせるかもしれない。」
自然界の要素にはたらきかける16種類の魔法文字。
更に、「魔法制御文字」と呼ばれる無数の演算子が存在する。
異なる魔法を合わせ用いて、互いにどのように作用させるか。
あるいは合体、あるいは増幅、あるいは同時発動・・・。
魔法の現象が発動する「軌跡」「軌道」はどのように描かせるのか。
あるいは球状、あるいは発散、あるいは武器に宿らせる・・・。
力のはたらく方向。
自分にかける、他人にかける、自他ともにかける・・・。
攻撃魔法とするのか、防御魔法とするのか。
そして魔法力をどれくらい消費して発動させるのか。
あるいは全魔法力中の割合、相対魔力。
すなわち、1割、2割、3割、・・・総力。
あるいは魔法単位(=ムーワ、Mw)を基準とした、絶対魔力。
すなわち、1Mw、2Mw、3Mw、・・・10000Mw、・・・。