第 10 章「無量義(むりょうぎ)」
第 01 節「魔都集結」
戦士やその卵である青少年が持つ資質を引き出し、適切な武器を推薦して、体格などに応じた戦法を授ける。
これが昔からのスヰフォスの指導であった。
彼が見て取れる資質は体力と技術の面だけではなく、魔力と精神の面にも及んでいた。
“LIFE”はまだ知らない。
けれど“心”によって物理戦法の内容も、発動する魔法現象も、目指す方向も決まっていく。
初めてファラが訪ねて来た時、彼は衝撃を受けた。
まだ幼さの残る少年が、両親と別れて一人で旅をしている。
ただ、そのことだけではないのだ。
どのように育てたら得られようか。
漏洩することなく湛えている、溢れるほどの魔力。
使い方を知らなくても、持てる力の限りを出し切れる判断の速さ。
樫の木でできた杖を、まるで剣のように使う。
彼は金属でできた武器を与えることを迷った。
そして思い止(とど)まってしまった。
丈夫ではあるが殺傷力も攻撃力もない、魔法使いの杖。
木の枝に等しいこの武器だけで、少年がどこまで行けるのか。
老年にさしかかるスヰフォスの胸が、若返ったように躍っていた。
村の子供たち、ファラより年長の子もいる。
誰もかなわない。
学師の教えを求めてやってくる、本物の武器を持った大人でさえ、樫の杖に勝てなかった。
『伸び盛りの今、預かった以上、わしには責任がある。
魔法の資質も伸ばしてやらねばならぬ。』
武器の調達ならば造作もないスヰフォスが、苦心して魔法の本を集めてくれた。
フィナモ、パティモヌ、クネネフ、ドゥレタ、ザイア、ズーダ。
四属性と冷熱。
その中に混じって、「ロニネ」の本があった。
少年は思い出したように、懐かしそうに、開いてみたり、表紙を眺めたり、胸に抱きしめたり、いつまでも手放さない。
やがて尋ねた。
「先生、この本の文字、何て読むんですか?
・・・ロ、ニ、ネ、そうだった!」