The story of "LIFE"

第 09 章「無尽(むじん)」
第 03 節「悪鬼魔民(あっきまみん)」

第 18 話
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炎がテンギの髪に燃え移ってしまった。

ホッシュタスの全魔法力を消耗させたフィヲは、ファラの所に戻ってきて、ロッドからの奔流でテンギを水攻めにした。
甲板は水に浸(つ)かり、フィヲはもう戦えないファラを抱えて桟橋の方へ引き返していく。

その時、汽笛が鳴った。
誰かが船を出港させようとしている。

「フィヲ、ぼくはこのままメレナティレまで行く。
きみは後から来てほしい。」

力を使い果たしたファラを、敵の船に乗せたまま行かせることなどできるはずはない。
彼女は、それなら一緒に行くなどとは言わなかった。
否応なしに、ファラを船の外へ連れ出し、そして言った。

「しっかりして!
あなたがいなければ、誰が“LIFE”を実現させるの!?
テンギを倒せばそれで終わりじゃないのよ。」

だが一瞬の反発心が、ファラを船へ飛び込ませようとした。
フィヲがしがみついて、どうにか桟橋に留(とど)まった。

今までこんなに悔しそうなファラの表情はなかった。
足下へ拳を打ち付けている。

ファラの焦りは誰にも分からなかったに違いない。

あのリザブーグでの、シェブロンとの悲しい別れ。
師が捕らわれゆく悔しさを、じっとこらえて見送らねばならなかった。

力をつけることだけが、“LIFE”に近付くことだけが、師を守ることだと信じて戦ってきた。
孤軍奮闘する、滅び去ろうとしているロマアヤに少ない仲間と上陸し、自ら一切の責任を担って活路を切り開いた。

奪われた土地を奪還し、行く所行く所、“LIFE”に生きる喜びが敵味方に広がっていった。

多くの兵士はファラに習って刃を外し、殺生を止(とど)め、敵をも生かす戦法へ、目を開いていった。

侵略と抵抗という、元同じ民族でありながら血で血を洗う戦乱に明け暮れていたイデーリア大陸に、“LIFE”の太陽が昇ったのである。

次はいよいよリザブーグ、そしてメレナティレへ。
最も背いた魔性の彼(か)の地に“LIFE”を広め、必ず師シェブロンを救出するのだ。

少年は、戦いの中で16全ての魔法をようやく修得し、“LIFE”の器として完成を見るはずだった。

しかしシャムヒィ最後の戦いにおける“フィナモ”の喪失・・・。

更には最も危険な難敵、テンギとホッシュタスを、寸(すん)での所で取り逃がすとは・・・。

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