第 09 章「無尽(むじん)」
第 03 節「悪鬼魔民(あっきまみん)」
ファラは、ゼネラル・セムワーの殺傷力の高い魔剣と組み合うことをしたくない。
組み合えば、幾つもの刃にやられてしまう。
斬撃をかわしてカウンター、あるいは武器破壊を狙う。
約15時間振りに魔法を使った。
リザブーグの城下町で、初めてこの無刃刀を持った時、重くて到底扱えなかった彼も、今では我が身の一部のように自由自在に操ることができた。
フィヲが甲板を叩き割るのに用いたのは「ゾー(重力)」で、高く持ち上げたロッドを、振り下ろす寸前で岩塊のように重くした。
一方ファラが攻撃の威力を増すためにいつも使うのは、武器に攻撃型ロニネを張る方法だ。
これで打撃の強度が上がるし、防御にもなる。
敵の武器と鎧を破壊対象と見なして、攻めて攻めて攻めまくる。
セムワーは恐れをなした。
一歩、後退りする。
ファラはそこを攻める。
相手を守りに回してしまう。
攻撃主体の魔剣が、ファラの連続攻撃をよけるためにのみ使われていた。
押していく中で、今こそ粉砕だ、というタイミングが現れる。
ファラは自ら作ったチャンスを最大限に生かすのが上手かった。
忌わしき魔剣を砕き、過剰防衛のフルメイルをも貫通させてやりたい。
相手が攻めの力を込められず、受けに徹している刀身のど真ん中。
見事に斬り貫(ぬ)いた。
セムワーの無様な魔剣は枝分かれした刃ごとに散らばり、柄の部分だけ握られていた。
兜が前のめりに外れかかっている。
あと二回・・・!!
ファラは無刃刀の刀身を、剣先から柄の部分までまっすぐ立てて、相手の体と平行に叩き付けた。
突き飛ばして体勢を崩させる。
獲物に狙いを定めて決して逃すことのない肉食動物のように、ファラの目は今、とれかかったセムワーの兜だけに集中していた。
ついに飛び掛ると、情けも容赦もなく、頭上から無刃刀で両断、金色の髪が解(ほど)けて前へ倒れた。
見事、真っ二つに斬られたのは兜だけだった。