第 09 章「無尽(むじん)」
第 03 節「悪鬼魔民(あっきまみん)」
メレナティレの騎士たちは皆倒れた。
残ったのはセムワーという名のゼネラルただ一人。
今回のイデーリア上陸で戦闘員を指揮する立場にありながら、彼が最もファラを恐れていた。
実際、まだ一度も剣を交えていない。
逃げれば追ってくるだろう。
その時は海へ飛び込むしかない。
セムワーは懐に隠した拳銃を出した。
撃つことにためらいはなかった。
スキューン。
ファラの盾に当たった。
もう一発。
今度はフィヲがロニネを張り直して、跳ね返った弾丸は甲板に転がった。
銃口はフィヲに向けられた。
ドン、ドン。
鈍い音がする。
バリアは破れない。
ファラが間合いに飛び込んだ。
薙ぐ。
拳銃が滑っていく。
部下たちのものより重厚でいかめしいフルメイルは、ファラの無刃刀の打撃を吸収した。
ゼネラル・セムワーは勝てると思ったようだ。
殺戮のためだけに作り出された、至る所にギザギザの刃が光る大きな魔剣を背から取ると、一振り、ファラに斬りかかった。
ロニネが歪んでいる。
これは破られる。
「フィヲ、ホッシュタスが出てこないか、見張っていてほしい。
・・・ぼくも魔法を使うよ。」
果たして、魔力を持った相手だろうか。
こればかりは、撃ってこない限り分かりにくい。
未知の敵と戦う時は、自分の経験と、想定されるあらゆるパターンから、何が飛び出してもいいように備えておくことだ。
そしてとっさの判断力も戦局を左右する。
千差万別のあらゆるタイプの人間と渡り合えるようになった者こそ無敵であり、最強といえるのではないか。