The story of "LIFE"

第 09 章「無尽(むじん)」
第 03 節「悪鬼魔民(あっきまみん)」

第 10 話
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船へ上がってきたフィヲの顔を見た瞬間、ファラは反射的に追い返そうとしたが、すぐ思い止まった。

自分一人の悲観から来る投げやりな気分は払拭された。

ヴェサに言われたばかりだったのに。

「ファラくん、魔法は全部、わたしに任せてください。」

その一言で胸を打たれた。
声は出ず、ただ頷いて手を取った。

全て彼女に任せて、剣を振るってみよう。

「怪我をしたくなかったら、船乗りは下がっていろ!
戦闘員は総勢で来い!!」

おおお、と敵の喊声(かんせい)が上がって、フルメイルで武装した騎士たちが襲い掛かる。

バチン、バチン、バチン。

とっさにフィヲの手で3発の電撃が続けて弾けた。
鎧の外側から感電した騎士たちは武器を取り落として倒れ込んだ。

まだ包囲は解けない。

ファラが一人に膝目掛けてタックルし、体勢の崩れた所で腹部へ頭突きを入れた。
更に無刃刀の柄で兜を横殴りにする。

だが、相手方も訓練を積んでいる。
別の一人に、さっと、フィヲとの間へ入られたらしい。

背後から振り下ろされる鋭利な剣を、盾で受けて、倒れ掛かった前の相手を蹴飛ばし、振り向いて無刃刀の先端を鎧の隙間に突っ込んだ。

「ぐおっ!」
「ファラくん、右!」

フィヲが言うように右の相手へ斬り返す間、今無刃刀で刺された騎士は、反対側からファラを狙っていた相手へ向けて突き飛ばされた。
敵と敵とがぶつかり合って倒れた。

何人か斬って、もう息が切れそうだと思った時、辺りの空間がきらきらと水色の光で満たされるのが見えた。
フィヲはファラと自身に、海水からのヒーリングを発動させていた。

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