第 09 章「無尽(むじん)」
第 03 節「悪鬼魔民(あっきまみん)」
ザンダが先に戻ってきた。
「ファラくん!
大変だ、メレナティレの船だった!!」
「えっ!?」
ファラはヴェサに無理をさせまいと周囲にいた婦人に老婆を頼み、回復しない体で港へ急いだ。
ザンダも一緒に走る。
こちらに来かけていたフィヲも、相当動揺しているらしい。
3人は人混みを掻き分けて船へ近付いていった。
船乗りがファラを見て叫んだ。
「ホッシュタスが、・・・テンギも、いなくなったんです!!」
「そんなっ・・・!!」
彼はザンダとフィヲを置いて、桟橋へ駆けた。
足早にブリッジへ隠れるホッシュタスと、10人がかりで運ばれる、仮死状態のテンギの棺が見える。
「待て!
そいつらをどうするつもりだ!?」
メレナティレの海兵たちは槍を突き立て、ファラを取り囲んだ。
「我が国へ護送する。」
「ガキはすっこんでろ。」
一人がファラの腕に掴みかかったので、ここは力ずくでも止めなければと、無刃刀を抜き、反対側の舷(へさき)まで突き飛ばした。
「何をする、このやろう・・・!!」
襲い掛かった二人目と三人目を薙ぎ、四人目を叩き斬った。
騒ぎを聞きつけて、中から銃器を持った兵が集まってくる。
ファラはロニネを張り、敵の銃を次々に爆破した。
『まずい・・・、あまり魔法を撃ち過ぎると、倒れてしまいそうだ・・・。
それに、二人を・・・!!』
ザンダが追いついてきて、ファラの横に立つ。
「ザンダ、フィヲを頼む、それから君のロマアヤを守ってくれ!」
「そんなこと言ってる場合かよ!
この船、全員引き摺り下ろして沈めてやろうぜ!!」
「ダメだ。
ホッシュタスとテンギを下ろさせるだけでいい。
奴らとは剣と剣の戦いじゃない。
港のみんなを、絶対に巻き込みたくないんだ。」
ファラが血相変えてそう言うのである。
ザンダはファラに、腕の力で押し返された。
こんなふうにされたのは始めてだった。