The story of "LIFE"

第 09 章「無尽(むじん)」
第 03 節「悪鬼魔民(あっきまみん)」

第 04 話
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「もう泣くのはおよし。
お前までどうにかなってしまうよ・・・。」

ヴェサも涙を流した。

「戦い続ける中には、失うこともあるさ。
この子はテンギを救いたい一心で、“生命”を少し使ってしまったんだ。
若さだってそうじゃないか、もう元には戻らない。」
「でも、・・・こんなのってっ・・・。
ファラくん・・・!!」

大きな声で呼んだため、ファラが目を覚ました。

「ん・・・、フィヲ、よかったね・・・。
マーゼリア大陸に帰ろう・・・。
早くシェブロン先生をお助けしなければ・・・。」
「苦しくないの!?
力の一部が、どこかに行っちゃったみたいなの・・・!!」
「分かってるよ、それでもいいさ。
・・・どうやらね、一つ、使えなくなったみたいなんだ・・・。」

それは“フィナモ”の魔法だった。
幼少の頃に母を失って、父と旅をする中、土に魔法陣を描きながら教わった最初の魔法。

父は騎士なのに、なぜ魔法を教えられたのだろうと、ファラはずっと不思議に思っていたのだった。

「ファラくん、大勢の人が助けてもらったのに、もう使えなくなっただなんて、あんまりだわ・・・!!」
「いいんだよ。
まだ他の魔法は使える。
“フィナモ”だって、ちゃんと生きてるんだ・・・。」

この時、自分ばかり泣いてファラをこれ以上苦しめてはいけないという思いの中、フィヲは自分がファラのために“炎”を使う手になろうと心に決めた。
ロマアヤへ来てからずっとファラの戦う姿を見てきた彼女は、少年が“フィナモ”を使う場面をよく脳裏に焼き付けていたのだ。

「ごめんね・・・。
もう少し、休んでいて。
ご飯の準備、してくるからね。」

ザンダはよく眠っている。
回復も順調だった。

ドガァは目を閉じながら、実はずっと起きていて、ファラが話している時、何度かちらっと見た。
そして満足そうな表情を浮かべると、また目をつぶった。

彼らは昼食が遅くなってしまった。
港では、守備に残ったロマアヤ兵たちが交代で食事を終えて、各々の持ち場へ戻っていく頃だった。

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