The story of "LIFE"

第 09 章「無尽(むじん)」
第 03 節「悪鬼魔民(あっきまみん)」

第 02 話
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兵を収めたロマアヤは、新しい国を作るべく動き始めていた。

セト国シャムヒィへ使者を立て、それぞれの行き方を尊重したい旨、述べさせた。
ブイッド港については各国が引き上げた後、昔のようにセトとロマアヤで共用したいと伝えた。

これらはムゾール=ディフの考えだが、多くの人は首をかしげていた。

「せっかく一つの理想に集まってきたのに、また別々になるのか?」
「中には報復しようという奴がいるかもしれない。」
「それなら俺たちだって、全然仕返しが足りねえ!」

老ムゾールは皆の心をまとめるように言った。

「戦場で我々を通じて“LIFE”と出会った者ならば、ともに一つの国をと思うだろう。
だが、シャムヒィにいる老若男女は皆、セト国の侵略を支持し、ロマアヤの壊滅を待ち望んでいたのだ。
それがテンギの反乱や、ロマアヤによる収拾といった出来事を見ただけで変わるものではない。
心配するな、いくらでも手は打ってある。」

“LIFE”による建国。
それは万人の理想である。

しかしながら、過去には正しく導ける者がいなかった。

今、他国からの侵攻という非道に、最後まで“LIFE”の信条を貫いてついに打ち勝ったロマアヤの人々ならば、このイデーリア大陸を真の“LIFE”立国へと先導していけるに違いない。

時代はそこまで進展を見せたのである。

ムゾールの方針も、ひとたびロマアヤの旗の下に集った旧セトの将兵らに、国へ戻って家族や友人、知人らと、戦場で見た真実を語り合ってほしいということだった。

またシャムヒィにはサザナイア、ルアーズ、アンバスがいる。
メビカで、ウズダクで、彼らが実証してきた通り、きっと旧軍都でも、誠実に語ることにより人々の心を変え、“LIFE”の時代を築く礎(いしずえ)となってくれるだろう。

最も困難な局面を戦ってきた騎士ルビレムは、永く敵同士だったメビカ船団とウズダク海軍が、特別な戦利品もないのに手を取り合って喜び、酒を酌み交わすのを見て、胸が熱くなった。

そこへロマアヤ兵が交じり、旧セト兵も加わっていた。

「殺傷してはならない」・・・、そう言われて刃を返し戦ってきたことが誇らしく、また懐かしく思い出された。

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